第16話


処置台に裸の會澤小春を横たえる。


生きている内に勝手に脱いでくれたので、服を脱がす手間が省けた。


動かない人間から衣服を剥ぎ取るのは容易ではないから、とても助かった。


僕は死後硬直する前の顔をマッサージして、苦悶の表情を浮かべる顔を整える。


目黒修:「それじゃあ、會澤さん。君を美しく保存してあげますからね」


数分前まで暴れ馬のようだった會澤小春の裸体にアルコールを吹きかけ、隅々まで消毒を行った。


泥水に濡れたおかげで彼女は既に入浴を済ませているので、髪や顔を洗う必要はない。


目黒修:「時間のかかる工程が省けるから、次からは上手く誘導して自分で風呂に入ってもらうべきか……?」


彼女たちの美しさは生モノなので、殺した瞬間からその美しさは損なわれていく。


防腐液を注入する前までの工程を省くことができれば、より肌艶が美しいまま保存できるかもしれない。


目黒修:「まぁ、毎回泥水をかけるわけにも行かないしなぁ。男女の関係に持ち込めば簡単だけど、栞以外抱く気はないから自分で風呂に入ってもらうのは無理だろうな」


會澤小春の肌に保湿剤を塗り込みながら自分の提案を否定した僕は、彼女の手首を切開する。


専用の機械に繋がった二本の管を左右の手首に繋ぎ、僕は機械を稼働させた。


動脈からは赤く染まった防腐液が体内に注入され、静脈からは不要になった血液が排出され始めた。


全身に行き渡るように丁寧なマッサージを行い、手首や肩に疲労を感じながら休むまもなくメスで腹部を切開する。


胸腔や腹腔に残った血液や残存物を吸引し、防腐液を流し込む。


縫合と洗浄をすれば、一時的だが會澤小春の美しさがこの世に固定された。


僕だけのために。


◇◇◇


コレクション室には森岡静菜が白い台車の上に横たわっている。


その横に新しいコレクションの一員になった會澤小春を並べた。


目黒修:「おぉ……」


喘ぐように感動の声を漏らす僕は、初めての光景に息を呑む。


短期間にコレクションを増やすのは容易なことではないので、二体並んだ光景は圧巻だった。


目黒修:「すごい、美しい……。二人とも最高の作品だよ。手に入れられて本当に嬉しい」


涙さえ浮かんできた。


常温で保存しておくには有効期限がある。


そのため並べておける時間はとても短い。


目黒修:「もっと……もっと、ここに美しいものを並べたい。そうすればここは最高の眺めになる」


僕はコレクション室に並ぶ二つの作品を穴が空くほど眺め続けた。


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