初めて興味をもってきた人

人に関わりたくなくて、職場をかえた。


この体型とこの足、色々言われるのがめんどうで一年以内に新しい仕事にかえる。


我ながら、この掃除の仕事は続いてる。


だって、一人だから…。


楽でいい。


お昼は、だいたい一時半頃になってしまう。


いつも、私はこの階段で食べていた。


一人で、本を口に出して呼んでいた。


ある日、人がいるのに気づきやめた。


この体じゃなければ、声優さんになりたかった。


何か、変な人だと思った。


私みたいに、こそこそする必要がない人なのに…。


なぜ、わざわざこんな人目につかない場所にくるのだろうか?


戻ろう…。


仕事が終わると、スーパー側の従業員の三好さんっておばさんに話しかけられる。


「葉月さん、太りすぎてしんどいでしょ?カロリーとりすぎよ」


「すみません」


「努力をしないと、頑張ってね」


そう言って、いつも何かしら低カロリーと書かれたものをいただく。


カロリーを減らせば痩せるのならば、私はもう何百回もやっていた。


家に歩いて、帰る。


大好きだった自転車に乗れなくなって、一気に太った。


玄関の鍵をあけた。


掃除をすると2日、3日動けなくなるから、ロボット掃除機を買った。


荷物は、少なくした。


片付けは好きだったけれど、それをすると痛みで動けなくなるからやめるようにした。


だから、月に一回だけきちんと掃除をして2日ゆっくり休むのだ。


めんどくさい体。


こんなのを手にいれたくなかった。


足首と膝、そして腰が悪い。


ブー、ブー


両親もいない私を心配して、従姉妹の美桜みお姉ちゃんがよくかけてくる。


こないだ、親戚の集まりに行った時に会った私の体型を見てからはしつこいのだ。


「もしもし」


『野菜ちゃんと食べてる?』


「食べてるよ」


『もやし多めにしなさい。海藻もいいって、後テレビでね』


「わかった」


『次、会うときまでに痩せてなさいよ』


「はい」


電話が切れた。


やれ、バナナだレンコンだ。


テレビを見るたびなんなのだ。


冷蔵庫を開ける。


大好きな料理をいつからかしなくなった。


納豆かけご飯で、いいかな?


いただきますも口に出さなくなった。


不味い、何を食べても不味い。


砂を食べたってかわらないのではないか?


噛むのが苦痛だ。


水を飲んで、流し込む。


助けて欲しいよ、私。


もういっそ、お母さんとお父さんのとこにいきたい。


許してよ。誰か…。


気づくと眠ってた。


寝るから、太るんだ。バーカ


デブ、醜い、キモい、こんな肉の塊、消えろ、毎日自分に捧げる言葉。


お風呂に入って、無理やり寝たら朝がくる。


もう一生私の世界は、変わらないって信じていたのに…。


「大好きだよ、チュッ」


そう言ってるのが、聞こえた昼休み。


話しかけてこられた。


約一年、この場所にいたのに一度も声などかけてこなかったのにどうしたのだろうか?


最後の言葉しか聞こえなかったのに…。


私の痩せない体を、この人は初めて理解してくれた。


嬉しかった。


連絡先を交換した。


崎谷さんは、私と明日会ってくれると言った。


次の日、久しぶりにお洒落をしてメークをした。


晒し者にされた。


何も変わらないと思った。


ゲイだと言われた。


だから、何なのだろうか?


私のこの体より、崎谷さんはマシではないか。


ルックスも体型も声もよくて、ただ男の人が好きなだけなのだ。


不思議そうに、私に言うけど


私は、そっちが不思議だった。


見た目にわからないなら、いいではないか?


口に出さなければ、誰にも気づかれないのだ。


わざわざ、なぜ私に話したのだろうか?


努力してもどうにもならない私と崎谷さん。


崎谷さんも、自分と重なったのだろうか?


人を好きになる事は、努力じゃどうにもならない。


痩せるのも同じだと知らなかった。


それでも、私は努力しなくちゃ周りに言われ続ける。


崎谷さんも、同じなのだろうか?


不思議な人


私みたいなのに、興味をもって


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