美陸の思い
「ただいま」
「おかえり、かずくん」
「りーちゃん、ちゃんと送った?」
「うん、葉月さん送ってきたよ。」
「それなら、よかった。」
美陸が、俺にビールをくれた。
「怠けてるって思われて、辛いよね。」
「うん」
美陸の言葉に頷いた。
「努力じゃどうにもならない事って、やっぱりあるんだよ。」
「そうだよな。」
「りーちゃんは、お昼何食べてたの?」
「働いて、一年経たないぐらいなんだけど。毎日、食べてるのはキャベツやワカメや春雨やなんかそんなんだったな。とにかく、美味しくなさそうだった。」
「それで、体型はぽっちゃりさんのままだったって事?」
「うん、かわってないよ。それで、他の人にデブだとかこれ食べたら痩せるとか言われてるの聞いたな。でも俺は、毎日そんなん食べてるの見てたから…。俺には、葉月さんが努力してないように思えなかったんだよな。」
「そうだったんだね。かずくん以外、誰もそういうの見てなかったんだろうね」
美陸が、俺を抱き締めてきた。
「だけど、理由あると思うんだよ。何で、葉月さんが痩せれないのか…。俺達は、男だから話すの嫌かな。嫌、美陸は、女の子の気持ちがわかる方だろ?俺よりさ。葉月さんの話聞いてあげれないかな?」
「そうだよね。次、会った時に聞いてみようかな。」
「そうして、あげて欲しいな。俺には、話しずらいだろうから」
美陸は、俺の肩に頭をおいた。
「葉月さんは、幸せになれないのかな?」
「かずくんは、幸せになって欲しいの?」
「うん、だってあんな風に泣いてるのとか見ると…。幸せになって欲しいなって、見た目なんかじゃなくて中身を見てくれる人に出会えないかなって…。」
「僕達が、幸せにしてあげれたらよかったね。」
美陸は、ビールを飲んでる。
「そうだよな。どっちもいけるなら、幸せに出来たかも知れないよな。」
「だけど、僕もかずくんも女性はダメでしょ。りーちゃんだけ、一人みたいになってしまうよね。」
「そうだよな。そうなるよな。」
俺の心は、重い。
なぜ、俺は、両方を愛せないのだろうか…。
キスとかだって、出来ないわけだし。
「難しいよね。りーちゃんが何も望まない人ならいいよ。だけど、泣いたら涙を拭って欲しいし、抱き締めてほしい、キスだってしたいだろうし、その先も…。年齢的に子供や結婚もって考えたら、僕達じゃ難しいよね。」
美陸の言葉に、頷いた。
結局、俺には葉月さんを幸せになど出来ないのだ。
「そうだよな。難しいよな」
「とりあえず、今はゆっくり知っていけばいいんじゃない?今、わかってるのは、りーちゃんは痩せにくい体質で、職場が同じ」
「両親がいなくて、一人暮らし。料理がうまい」
「それだけしかわかってなかったら、幸せにするとか無理だよね?」
「そうだよな。ちゃんと葉月さんを知る事が大切だよな。」
「当たり前だよ。ちゃんと知ってからだよ。」
美陸は、俺に笑いかけた。
「そう言えば、俺達キスとかあんまりしないよな。」
「確かに、そうだよね。何か、なくても何とかなるよね。昔は、絶対ないなんて考えなかったよ」
「そうだろ?俺もだよ。でも、何か美陸だと不思議と何もしなくたっていれるんだよ。何でだろうな?」
「結婚向きなのかもよ」
美陸が、笑った。
「たまには、キスするか?」
「えー。何かムードないからいいよ。」
「そうなの?」
「うん、僕はくっついてるだけで充分な珍しいタイプでしょ?」
「そうだな。確かに珍しいよ」
俺は、笑った。
俺は、美陸の腰に手を回した。
この先、ずっと美陸といれそうな気がする。
葉月さんも、そんな人を見つけられないだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます