三人の食卓
ダイニングテーブルにご飯を並べた。
「いただきます」
ビールを出してきて、
「俺は、葉月さん送るから。葉月さんは?」
「お酒は、飲めません」
そう言ってる。
「じゃあ、お水」
「ありがとうございます。」
「葉月さん、下の名前は?りかだったっけ?」
「はい」
「じゃあ、りーちゃんね。りかちゃんって嫌でしょ?なんか、あの人形みたいでさー。」
「美陸さん、わかりますか?私も嫌なんです。太ってないですから、あちらは…。」
そう言って、葉月さんは笑ってる。
「あのさ、あんな風にコチョコチョ言われてんの?」
「そうですね。足の事もあり病院に私は、通っているのですが…。お年寄りに可哀想、まだ若いのにと言われました。後は、デブとかブタとか、もう気にしないでいますが…。」
「嘘だよね?」
「えっ?」
「気にするし、傷つくよ。そんなのなれない。僕には、わかる。」
そう言って、美陸はビールを飲んだ。
「そうですね。でも、気にしないようにしないと生きれません」
葉月さんは、涙を流して味噌汁を飲んでる。
「痩せないのって、何でかな?」
「さあ?何ででしょうか?」
「理由がわかればいいのにね。」
「そうですね。」
「でも、いいんじゃない。無理して痩せなくても、いつか一キロ痩せれたらいいよ。」
俺は、ハンバーグを食べる。
「うまっ」
「僕も思った、りーちゃんのご飯うますぎるよ。」
こんなに優しい人を追い詰める
「努力しても、痩せないから美味しいものを作って食べるって言ったよね、葉月さん」
「はい、言いました。」
「それって、すごくいい事だと思うよ。」
「そうですか。だって、食べても痩せない。食べなくても痩せない。なら、食べるしかないじゃないですか…ハハハ」
葉月さんは、笑ってる。
美味しそうに、食べる。
「幸せ?食べるの?」
「好きだけど、苦痛でした。ずっと苦しかったですよ。食べる事が…。だって、みんなに否定されたら私はダメな人間で。食べる事も怖くなりました。もう、生きてる価値もない気がしました。砂を食べてるみたいでした。飲み込むのも辛かった。」
葉月さんは、泣いている。
痩せない体を理解されなかった。
何を話しても否定されたのだ。
「美味しく食べよう。体型なんか気にしなくていいよ。いつか、ゆっくりでも痩せれたらいいと思うよ。」
美陸は、そう言って笑った。
「俺も、それでいいと思うよ。無理する必要なんてないよ。誰にも理解されなくて、辛かったんだな。葉月さんは、一人で抱えていたんだな。」
「そうですね。でも、お二人もそうだったのではないですか?理解されなくて、辛かったのではないですか?」
そう言って、葉月さんが笑ってくれた。
「俺は、普通ですよってフリしてるから辛くなかったよ。」
「僕もそうだったね。でも、見た目を傷つけられるりーちゃんは一番辛かったと思うよ。それが、誰にもわかってもらえないなんて一番辛いよ。」
葉月さんが、作ってくれたご飯はとても美味しかった。
食べる事が、辛かったなんて今の葉月さんから想像つかないな。
買い物行った時に、楽しそうな顔してたのにな。
そこにいくまでに、辛くて悲しい思いしていたんだよな。
「ごちそうさまでした。」
俺達は、食べ終わった。
「りーちゃんの、ご飯また食べさせてくれる?」
「もちろんです。」
「お弁当作って欲しいぐらいだよ。」
「わかる。僕も…。」
「美陸さんには、どうやって渡せばいいのでしょうか?」
「お弁当作ってくれるのー。」
「構わないですよ。」
「じゃあ、朝。スーパーの前に取りに行っていいですか?何時出勤?」
「9時です。」
「じゃあ、ちょうどいい。僕、7時にでるから。取りに行きます。」
「明日の帰りにお弁当箱買ってきます。」
「はい、お願いします。」
「葉月さん、俺もお願いしていいですか?」
「はい、勿論です。」
葉月さんは、笑ってくれた。
「じゃあ、送りますよ。」
「はい」
「またね、あっ、連絡先かずくんに聞いててね。」
「はい、わかりました。さようなら」
そう言って、葉月さんと俺は、家を出た。
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