ぽっちゃりだね

俺の家に、葉月さんをあげた。


「お邪魔します」


「どうぞ」


俺は、キッチンに案内した。


料理もしないくせに、キッチン道具は揃えていた。


「玉ねぎのみじん切りは、できるよ。これで」


フードプロセッサーを見せた。


「助かります。」


手を洗って、玉ねぎを洗った。


葉月さんも、手を洗って料理をつくってる。


料理に時間がかかるタイプのようだけど、基本丁寧で、たまに雑い。


葉月さんの料理をつくってる姿は、見ていても飽きない。



1時間ほど経った頃、美陸みろくが帰ってきた。


「いい匂い。今日は、早く帰れたんだよ。かずくん」



そう言って、キッチンを見て固まっていた。


「そういう事?はぁ、何なの」


美陸は、葉月さんを見て怒った。


「違う。そういうのじゃないんだよ」


「かずくん、恋愛対象、男じゃなかったのかよ?」


「男だよ」


「じゃあ、何で?ぽっちゃり女子が飯作ってんの?」


「ぽっちゃりさん?」


「どう見たって、ぽっちゃりだろーよ。」


美陸は、怒ってる。


「ありがとう、やっぱり美陸はいい子だよ。」


「はぁ?何言ってんの?」


「こっち来て、紹介するから」


「いや、意味わかんないから」


俺は、美陸をキッチンに連れていく。


「葉月さん、俺の彼氏の美陸です。」


「あっ、お邪魔してます。葉月梨華です。初めまして、よろしくお願いします。」


「声、ちっさー。」


「美陸、失礼だよ」


「ってか、あんた何なのかずくんの」


「何とは?職場の人です。」


「職場の人ぉぉぉーーー。かずさん、何でそんな人に僕を紹介してるの?ば、ば、ば、馬鹿じゃないの?」


「何で、葉月さん。俺、ゲイって話したよね?」


「はい、そうですね。」


葉月さんは、煮込みハンバーグをつくってる。


「そうですね。じゃないから。あんた、気持ち悪いとか思わないの?」


「いえ、ボーイズラブやガールズラブの類いは大好きですよ。」


葉月さんは、ニコニコ笑った。


「はぁー?変でしょ?あ、あ、あんた。変な人間でしょ?あっ、わかった。心の中で差別してるでしょ?嘲笑ってんでしょ?」


「美陸、そんな人じゃないよ。」


葉月さんは、煮込みハンバーグを味見して小皿を置いて美陸を見つめて言った。


「努力じゃどうにもならなかったんですよね?それなら、仕方ないじゃないですか!私も一キロも痩せないです。だから、美味しくご飯を作って食べる事に決めました。だから、美陸さんも楽しく崎谷さんとお付き合いする事を決めたんですよね、きっと」


葉月さんの言葉に、美陸は泣いていた。


「いいひとね。ぽっちゃりさん」


「アハハ、ぽっちゃりでしょうか?もう、その範囲は越えましたよ。」


そう言って、葉月さんは笑ってる。


「僕、何かあんた好きだよ。気に入った」


美陸は、葉月さんにそう言った。


「ありがとうございます。」


葉月さんは、美陸に頭を下げた。


「何、作ってくれてるの?」


「煮込みハンバーグ」


「うまそう。もうできる?」


「もうすぐ」


「やったー。」


美陸は、そう言ってスーツを着替えに行った。


「二人暮らしですか?」


「いや、半同棲だよ。」


「へー。」


「葉月さん好きな人は?」


「いません」


「年齢とか聞いたら怒る?」


「いえ、37歳です。」


「俺の一つ下なんだ。バイト?」


「はい。」


「親とかに色々言われない?」


「親は、死んだのでいません。兄弟もいません。なので、一人暮らしです。」


そう言って、葉月さんはお味噌汁の味見をしてる。


抱えてるものが、たくさんあるんだな。


人は、見た目だけではわからないのだ。


俺は、葉月さんに話しかけて秘密を聞かれてよかったよ。


「もう、出来ます」


「うん、葉月さんも食べよう」


「はい」


俺は、葉月さんと器に盛り付ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る