第2話 パスワード

「なんのことですか?」

少女は慌てて開いていた本をシンジにみせた。


「ごめんなさい。本の事を言ったんです。書いている文字のことです」


シンジはもう一度しっかりと本を見た。やはりただの白紙のページがあるだけだ。


「僕には見えないな。君は熱心に本を呼んでいたようだけれど、見えているの?」


「はい。見えています。とても面白くてついつい熱中してしまいました。」

 

照れ笑いを浮かべて少女は本を閉じて鞄にしまった。

たちあがりシンジのほうに歩いて近寄った。


「ほらみえますか?」

と言い顔を近づけてきた。

シンジは彼女の意図が分からず困惑して少し身を引いた。


「何を見てほしいんだい」

「えへへ、困らせてしまいましたね。」

彼女はいたずらっぽく言って

「私の目ですよ」

といい右手の人差し指で彼女自身の右目を指さしながら言った。


「目??」

シンジは不思議に思いながら彼女の右目を覗き込んだ。


そこにはコンタクトレンズのようなものがあった。

よく見ると何やらレンズの中で文字が浮かんで見えるのが分かった。

シンジは新しいものを見た時のようにものすごく興味をそそられて

もっとよく見ようと顔を近づけた時、彼女が後ずさりした。


「東山さん近すぎですよ」


「ごめんつい夢中になってしまってははは、、」

シンジは一歩引いて彼女から距離を取った

「ところでなんで僕の名前を知っているの?」


「東山さんがしているネームプレートです!勝手に拝見しちゃいました。」

ペロッと舌をだしながら頭にこぶしを当てながら言った

シンジは一瞬でもかわいいと思ってしまった自分に

相手は女子高生だぞ と心の中で自分をたしなめた。


「ああそういうことか。いつも首から下げているからね。君はなんていう名前なのかな?」


「えっと、私はアイって言います。」

「アイちゃんか。苗字は?」

「苗字は今はないんです。まあいろいろありますから ははは」

ごまかし笑いをしながらアイはこれ以上詮索されたくないように話題を逸らした。

シンジは察して追及はしないようにした。

「東山さん、このコンタクトレンズのVRAI(ブライ)は知ってますか?」


「ネットの広告で見たよ。先月から発売したらしいね。」


「はいそうなんです。いろんなことが出来てすごいんですよ。さっき読んでいた本も自分からだと文字が浮かび上がって見えるんですけどほかの人からだとみえないみたいですね。ちょっと確かめたくて意地悪しちゃいました。」

アイはちょくちょくかわいらしいしぐさを会話の中に織り交ぜてくる。


「興味があったら一緒にVRLIFEっていう仮想空間がるんですけどどうですか?


私始めたばかりで友達少ないので。」

アイはベンチの上に置いてあったカバンを取って中を探ってA6サイズの紙を取り出した。


「東山さん、興味があるならここで会いましょう。それじゃ失礼します」


彼女はちょこんとお辞儀して小走りに去っていった

シンジはもらった紙に目を通した。

そこにはパスワードらしき文字列とVRLIFEという文字が書いてあった

VRLIFEにいけば彼女に会えるのだろうか?と考えなら仕事に戻った。



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