田中工務店
「じゃあ、そっち引っ張ってー……よいしょっと!」
田中のおじさんと、その息子さんと、僕の3人で、お
木槌で叩いて壁を取り外したり、ノコギリで柱を切り離したり、僕の知っているお
「よし、じゃあこれで上がりだな。友也くんありがとうね、助かったよ。」
田中のおじさんが腰を伸ばしながら言う。
「これ、バイト代っていうか……お駄賃かな?とっときなさい。それと友也君、これ欲しいかい?」
おじさんが封筒と、オレンジ色の布の袋を僕に渡してきた。
「なんですかこれ?」
袋の中には黒い石が入っていた。ピンポン玉をきれいに割ったような形と大きさをした、半球状の石だ。
「これは神社にあったご神体だね。桑原さんに聞いたら処分して良いとのことなんだけど、何か
「へぇ……、ありがとうございます。大切にします。」
僕は石を袋に戻し、ポケットにしまい込んだ。
そうして田中のおじさんたちはトラックに乗って去っていった。おじいちゃん達が夜までお酒を飲んでいるはずなので、そっちに合流するらしい。
トラックに一緒に乗っていくか?と聞かれたけど、なんとなくまだここに居たかったので、それは遠慮した。あと単純に、お酒の入ったおじさんたちは僕にウザ絡みしてくるので、あんまり帰りたくない。
僕はお
夕方まではもう少し時間がある。簡単な仕事とはいえ肉体労働の後なので、横になると気持ちがいい。季節は初夏だけど、周囲の木々が
昔はよく、嫌なことがあったりしたらここに来て、こうやって軒下で
僕はポケットからご神体の石を取り出して、眺めながら片手でくるくる回す。
「これって、アレだよなあ……」
偶然だろうが、この形にはとても見覚えがある。
そんなことをぼんやりと考えていると……ジッ、というノイズのような音が耳に入ってきた。
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