やっぱり現実はそんなもの

 目が覚めた。

 僕は境内けいだいの跡で眠ってしまっていたらしい。

 さっきの体験は、やっぱり夢だったんだろう。ああいう夢を見るのは初めてではない。それこそ夢に見るほど、いつでも『太陽のサンズリバーサイド』については頭の中にあるからね。

 でも、すごくリアルだった。今も必殺技が放たれた手ごたえが残っている。手に握った石が熱いような気がする。


「……逆説受諾リバース・サイド

 世界の裏に潜みし者よ……命あるのものは地に帰れ、命なきものは無に帰れ。

 必殺『円環を絶つ剣リィンカーネーション・クラッシュ』」

 いつものように呪文を唱えてみる。何百何千と繰り返したその動きは滞りなく、必殺のポーズと共に手から光が放たれた……のは、やっぱり妄想の中だけだった。


 辺りは何事もなくシーンとしている。近くには誰もいなかったけど、何かに見られているような気がして、恥ずかしくなった僕はそそくさとその場を離れ、家路についたのだった。

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円環を断ち切る剣 Enju @Enju_mestr

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