第19章 dear my mind

新しい生活がここで始まる。

朝4時に起きてホテルの厨房へ

朝食ブッフェの調理をする。


一日250人以上のバイキング料理を作る

厨房は20代前半の若者やリゾバのバイト達が活気に溢れながら料理を作る。


タケシはガス場を任されていた。

多国籍料理

麻婆豆腐や大きなオムレツ、島の郷土料理、パスタなど1時間半のうちに12種類の調理を任されていた。

朝食は7時から始まりそのころになると厨房は

戦場化していた。


料理長から若い料理人に怒号が飛び交い

料飲さんと言われるホールスタッフからのオーダー。


追加料理をしながら翌日の仕込みをする。全て終わるのが15時過ぎ。

こんな毎日が続いた時間も生活も全てが一変し、

戸惑うこともあったがタケシはその日常に没頭した。


スタッフたちとのコミュニケーションはほどほどにしながら。。。


あるスタッフからタケシに話しかけた。

「タケシさんはそのご年齢で結婚されてますか?」


「いや、ずっと一人だったよ。本土で色々あったから恋愛とか結婚は考えてないから」


「そうなんですね。タケシさんは一生懸命で優しいそうなのに」


「一人が一番気楽さ」


「ところで宮古のプライベートビーチあるの知っていますか?この島にはいくつかあって島の人しか知らないビーチがあるんですよ」


「へー。行ってみたいな。まだこっち来て島の探索してないし笑。教えてよ。」


「いいですよ。教える場所は僕が一番お気に入りの場所なんです。僕もいろいろあってこの島に来て、嫌なこととかあるとそこに行くんです。」


と場所を説明して貰った。


ホテルから1kmくらい離れた海岸沿いに雑木林がありそこをかき分けて行くと小さな海岸があるらしい。


その日、仕事終わりにタケシは向かうことにした。



仕事が終わり、コックコートから私服に着替える。

地下にある更衣室から1階のスタッフ専用口から出た。小さな道路を挟んで広大なエメラルドグリーンの海が広がる。

道路脇のサイクルロードをタケシは歩き始めた。



柔らかい海風。。。

心地よい陽射し。。。


今日は早く仕事が終わり教えてもらった

プライベートビーチへ向かっていた。


何かに導かれるように土地勘もまだないのに

口頭だけの説明であたかも何回もその場所へ

行ったことがあるような足取りで向かう。


何の目印もない場所であったが

タケシは

「ここか。。。」


まだ蕾しかないハイビスカスの草木にほんの少しの畦道を見つけ

その雑木林をかき分けながら海の方向へ向かった。


やがて波打ちする音が聞こえてきた。


音がする方向へタケシは草木をかき分け向かった。


そしてタケシを明るい光が包んだ。



目の前が真っ白になり手で顔を覆う


ゆっくりと目を開き前を見る。。。


コバルトブルーの空に所々、雲が行き交う。

そして広大なエメラルドグリーンの海原が広がる。


タケシは思わず息を飲んだ。

「うわぁ。。。すげー」



柔らかい砂浜を海に向かってゆっくりと歩いた。


「こんな場所あるんだ。。。まるで天国に来たようだ。。。」


大きな流木が浜辺にあるのに気がついた。


「見た事のある風景。。。」


「ん?あ、、夢の中。。。の」


そう。

あのショートボブの女性と夢の中で出逢った場所だった。


居るはずもないその女性を目で探してみる。

「そうだよな。。。いないよな」


そして夢の中と同じように流木に腰掛け

タバコを取り出し火を付けた。


安らぎを覚えてる。。。

今までに感じた事のない感覚。


ここは神々が宿る島。。。


「ここで人生終わるまでゆっくり暮らしていこう。知り合いやしがらみがないこの場所でもう一度。。。」


タケシは少しばかりの生きる術を見つけようとしたのであった。


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