第3話 くまさんとの出会い
もらったプレゼントを覗き込んで見る。
今までこんな大きいものをもらったことがないのでリク君はとてもわくわくしていた。
自分の三分の二ぐらいの大きさの袋に少し輪郭が映っていて、袋の中身が自分の欲しかったものだとわかると、急いで蝶結びされたリボンを引っ張り、おもむろに被っていたものを搔っ攫った。
するとそこにはきょとんとこちらを見る熊のぬいぐるみがった。
それは熊と言うほど厳つくなく、縫い目が分かりやすく見えている、いかにも子供が好きそうな〝くま〟だった。
それからというものの、リク君はそのくまさんと遊んでいた。
朝起きたらおはようと言い、外から帰ってきたときはただいまと言った。それ以外にも機会さえあれば話かけていた。自分が話しかけ続けていれば、いつか返事が来ると思っていた。
しかし頭のどこかには、これがぬいぐるみであることに変わりはないと半ば諦めている節もあった。
しかしその時は来た。
諦めずに話しかけていると、くまさんがこちらに目を合わせたような気がしたのだ。
「くまさん」
そう思わず声を出すと、ついにくまさんが声を発した。
「君の言葉が届いたよ、私を起こしてくれてありがとう」
機械の補正がかかっていて、少しかわいらしい声をしたくまさんがこちらに寄ろうとすると、体が前に傾きごろんと倒れ転がってしまった。
リク君は慌ててくまさんに近か寄るとくまさんは笑い声を上げ、
「君があまりに話しかけてくれるから、自分が動けるものだと勘違いしてしまったじゃないか。なるほど自分の体には綿しか入ってないのか」
残念そうな声で言うので、リク君はそんなことない、くまさんの体は温かくて気持ち良いんだよ。とフォローするとくまさんは笑って、
「君はいつも気持ち良さそうに私を抱き枕にして寝ているからね」と言った。
しかし、その瞳の奥には心なしか笑ってないようにも見えた。
ぬいぐるみはもとより、表情も変わらないのだけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます