第6話 新天地②
自分の部屋に積み上がった段ボールの山を見てため息をついた。明日から学校が始まるというのに、足の踏み場もない程散らかっている。
荷解きまで頼むとかなり料金が高くなるからとママがけちったせいだ。
ひとつひとつ段ボールの中を確認しながら片付ける作業は、思った以上に時間と手間がかかった。これじゃ終わりどころか折り返し地点もまだ見えてこない。
四つ目の段ボールを開いたところで潔くあきらめて、とりあえずすぐに必要になりそうなものだけ荷解きをして終わりにした。
比べられる相手がいないから、ここらへんまでやればいいだろうと勝手に納得し、あきらめが早いのはひとりっ子の特徴かも。
ベッドにごろりと寝転んだ。置いてある物は同じだけど、壁紙や窓の配置が変わってまだ自分の部屋という感じがまるでしない。不思議な感じ。友達の家にお泊りにきたみたいに落ち着かない。
どこに配置するかまだ決まってなくて、部屋の真ん中に陣取っているパイプハンガーラック。一年間ほぼ毎日袖を通した萩野高校の制服は、ハンガーラックからクローゼットの奥に押しやられ、代わりに深緑のブレザーと上品なチェックのスカートの制服がそこにぶら下がっている。
森徳の制服は前の高校とは比べ物にならないくらい可愛い。
普通なら何も言われなくても、そんな気になれなくてまだ一度も着ていなかった。
ママみたいに前向きに考えると、学期の始めはみんなクラス替えしているし、そういう意味ではスタートは一緒。それにわたしの他にもひょっとして転校生がいるかもしれない。そしたら転校生同士その子と友達になれるかもしれない。
でもわたしが考えると、新しいクラスであっても当然何人かは知り合いがいるはずだから、わたしと同じスタートにはならない。それに、二年生から来る転校生はかなりの確率でいないはずだ。
また深いため息をついて、携帯のアラームをセットした。机には、萩野高校の部活の仲間から書いてもらったメッセージとクラス全員で最後に撮った写真が飾ってある。
泣いても笑ってもわたしは明日から森徳学園の生徒なんだ、と言い聞かせる。
さっき初めて森徳のパンフレットに眼を通してみた。
ママが言っていた通り敷地が広くきれいな学校で、パンフレットに載っている生徒達はみんな素敵な笑顔を見せていた。
真似して机の上の鏡に向かって笑顔を作ってみたけど、引きつった笑いにしかならなくて悲しくなった。
少し前から降り始めた激しい雨の音に、一層気が滅入る。
ベッドに置いてあるお気に入りのジンベイザメのぬいぐるみを抱きしめた。
不安と緊張でただでさえ眠れなそうなのに、この雨の音じゃ一睡もできないかも。
眠くはないけど布団に潜り込み、とりあえず目をつぶった。
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