第14話 政略結婚に文句は言いません~例え相手と犬猿の仲でもね~

「王妃殿下は、お前を高く買われている。最後まで王妃殿下はお前を王太子妃に推されたそうだが、ゼネウス殿下がフロリアナ嬢を希望されて譲らなかったそうだ。それでも王妃殿下はお前を嫁として迎えたいと希望され、第二王子との婚約を国王陛下共々打診されてきた」

(ウゲェ…)


 どうも、転生公爵令嬢シャイスタです。王太子の婚約者に落選したと思ったら、犬猿の仲の第二王子との縁談です。

 淑女にあるまじき蛙を潰したような声は心の中に押し込めましたが、嫌な縁談です。何故に悪さばかりするクソガキと結婚しなければならないのでしょうか?あいつに文字通りの意味で泣かされた少女達がどれほどいることか。はっきり言って、幼い頃から付き合いのある高位貴族の令嬢達は皆被害にあっており、例え王子と云えどもあれは嫌だと総員一致で結婚したくない男ナンバーワンなのですが。

「打診とはいえ、王家からのお話をお断りすることは出来ない。謹んでお受けするから、そのつもりでいるように」

「はい、お父様」

 訓練された淑女は、家のために嫁ぐのは当然なので、嫌な相手でも不満は言いません。特殊性癖で女を乱暴に扱う老齢好色貴族とかにやられるよりはましと思えば、犬猿の仲とはいえ一つ年下の王子様なんて、ものすごい良縁ですものね。たとえ、会う度に虫を投げ付けたり、スカートの裾をこっそり植木に引っ掛けて転ばせたり、人が気にしている劣等感ポイントをチクチクあげつらった挙げ句、嘲笑ってくる男でもね!

「まあ、かえって良いのかもしれませんね。第二王子殿下であれば、王太子殿下が無事お世継ぎに恵まれた後なら、我が家に臣籍降下していただける可能性もありますしね」

 そう。お母様のおっしゃる通りかもしれません。我が家の子どもは私1人。子どもが女ばかりであれば、他国ならばお家断絶になることもありますが、幸い我が国スルドレーベンでは、魔力持ちであれば女でも爵位を継げることになっています。もちろん、私も魔力持ちです。というか、貴族=魔力持ちと言っても過言ではないので、ほとんどの令嬢は要件を満たします。ただし婿をとった段階で、家庭の内情はともかくとして、婿である男性が当主として扱われることになります。また、一度娘は嫁入りして嫁入り先の従属爵位として存続させ、子どもが生まれたら、先代の男孫が継ぐというケースもありますね。なかなか女性が当主面することは難しい社会です。それは置いといて…。そういう事情を鑑みると、第二王子は婿殿として悪くないのです。元々我が家は初代王の弟の家系。改めて王家の血筋が入ることで、さらに威容が増すというものです。たとえ捻くれた小憎らしいガキでも、王子は王子ですからね。

 ただし、前世の記憶がある私は知っています。私には腹違いの弟がいて、その弟が爵位を継ぐことを。いつ頃彼は登場するのでしょうか。願わくば穏便に登場して頂きたい…

「そのことについても話がある」

 ん?

「アンナベル。許してくれ。実は、私には、余所で生ませた13歳になる息子がいる。近く、私の後継として迎え入れたいと思っている」

 ………

 今かよ!!

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