第2話 反魂術~4歳児に転生しちゃった?~
ひどく、気怠い目覚めです。
ゆっくりと薄目を開くと、白髪の老人が私の顔を覗き込んでいました。それも、日本人じゃない。西洋風の彫りの深い濃い顔をしています。
「成功じゃ」
したり顔で頷く老人の横から、女性が2人、私に取り縋りました。
「シャイスタ!あぁ、神様!お母様よ?わかる?」
「お嬢様…よかった…」
シャイスタ?お嬢様?誰?
頭はまだ靄がかかったようで、うまく働きません。それでも、私の名はシャイスタじゃないことはわかります。
違うよ。私の名前は
「しょうこ……」
! 自分の声じゃ、ない。この声は、あの、闇の中で聞いた声です。
「あぁ、声が出るのね。よかった」
重い瞼を懸命に開いて、母だと名乗ったその女性を見ました。金色の髪に、白い肌、切れ長の大きな目。高く通った鼻筋は、明らかに東洋人のものではない。やつれて隈が出来てはいますが、美術の資料集で見た西洋美女の絵を思い出させる絶世の美貌です。
「奥様、まだ熱がひいたわけではないようでございます。お嬢様にはもう少しお休みいただきましょう」
私の額に手を当て、母にそう進言する彼女は、母より随分年上です。祖母というには少し若いですが、私に言わせれば、「おばちゃん」世代です。彼女も、西洋人らしい彫りの深さはあるものの、母に比べると、平凡な顔立ち。ふくよかなせいか、肝っ玉母さんな雰囲気を感じます。
「そうね。シャイスタ。また悪くなってはいけないわ。ゆっくりお休み」
「ここは、私にお任せくださいませ。奥様は閣下にお知らせを。それから、先生にもお休みいただきませんと」
「そうだったわ。先生、ありがとうございました。客室を用意しておりますので、そちらへどうぞ。すぐにお茶を用意させます」
「では、ありがたく」
頭の上で飛び交う大人達の会話をぼんやりと聞きながら、私は回らぬ頭で理解しました。どうやら、私は祥子ではないらしい。そして、母の年齢からして、たぶん子どもなのでしょう。ひどく気怠いのは、熱病にでもかかっているのでしょうか。
普通ならば、到底理解の及ばないこの状況を、朦朧とした頭はあっさり受け入れました。そして、私は再び眠ることにしたのです。
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