第2話

「ふああ」


 僕が大きく欠伸をしたのは、翌朝、姉の経営するカフェでの事。


「眠そうね」


 そう言って姉は、僕の前にコーヒーを置いてくれた。もちろん、姉弟だからといって、店で飲む限り無料タダじゃない。


「昨日は、課長の砂金採りにつき合わされてね」


 あの後、課長が砂金の大粒を取ろうと執念深く続けたために、帰りがすっかり遅くなってしまった。その甲斐あって、課長も大粒の砂金が二つ採れたが、車一台分にはとうてい届かないだろう。


「ところで、姉ちゃん。例の教室は今日の昼からだったね?」


 姉のカフェでは、時々カルチャー教室や占い、上映会、陶器の絵付けなどいろんなイベントを開いている。今日もそんなイベントがあるのだが、昨日、帰りの車の中でその事を話したら、課長の奥さんと娘が参加したいと言い出した。今頃、二人はこっちへ向かっているはずだが……


「あら? それは助かったわ。今日のイベント参加者が少なくて。それじゃあ、そのコーヒーは紹介料という事にしておくわね」


 ラッキー! 


 スマホの着信音が鳴ったのはその時……相手は課長だった。


「え? 砂金が盗まれた?」

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