真実の愛?
侵入した賊のことやら、
「でも、本当に大丈夫なんですかアクゥーヤさま?」
今の話題は、
つまり、悪役令嬢がいつの間にか魔神と契約してしまった件。
ゲーム上の魔神は、悪役令嬢の心が弱ったところに付け込んできて、一気にその精神と身体を乗っ取ってしまうのだ。
今のところ、見た目は何とも無い
「もちろんですわ。真実の愛に目覚めたわたくしにとって、あの程度の魔神など取るに足りませんもの」
魔神を「あの程度」って。
っていうか?
「真実の愛、ですか?」
そう問いかける私に、
「はい。わたくし、初めてお目に掛かった時から、ずぅーっと……」
すっと顔を上げる
うわなんだこのエロい生き物。あと上目遣いは反則。
「ずぅーっと、
……。
…………。
……………………えっ。
あのちょっと待って私はノーマルだし
いや待て。ちょっと待て。
そう言えばこの人、私の方を見て惚けてることが多くなかった?
私がオーズィ殿下に絡まれてる時にも真っ赤になってボーっとしてたっけ。あれも、バカ王子に何故か惚れ直してたんじゃなくて、
それと、モブ貴族子女たちに絡まれてる時も、ものすごい勢いで私を庇いに来たわね。
政変が起きた際にも、
……あっ。
なんか、すごい仮説が頭に浮かんでしまったんだけど。
ちょっと待って。まさか、だけど、でも。
「もしかして、だけど。アクゥーヤさまが魔神と契約したのって……?」
「ええ。聖女様をお支えするための一助となれば、と、そう思いましたの」
念のためにちょっとそこらで武器を調達しておきましたのよ、くらいの気軽さで言ってのける
やだこの子、愛が、愛が重たい。
すっかりフリーズしてしまった私の頭に、ふと、聖☆クラのキャッチコピーが浮かんできた。
――二人の愛の力を合わせるのよ!――
――二人なら無敵なんだから!――
おいこら運営。
二人の愛の力って。
同性でもいいのかぁーーーーーっ!?
ああ、うん。確かに「愛の力」で「無敵」よね
二人の愛の力ってのもねぇ。異性に向けるような愛情でこそないけど、親愛の情なら私もアクゥーヤさまに対して
だってこの人、超絶美人でクールビューティな上に天使な可愛らしさまで持ってるんだし。
そんなアクゥーヤさまに愛情を向けられないんならそいつはもう人じゃないわー。聖女の名において人でなしを宣告するわー。
むぅ。
愛情の種類はとりあえず置いておくとして、
禁断の百合薔薇園へ
「えっと、あのね、アクゥーヤさま。私、その、異性に向けるような愛情をアクゥーヤさまに向けることは出来ないと思うの。そこは理解しておいて欲しいかな?」
「聖女様ったら、可笑しいんですの。そんなの当たり前じゃありませんか」
「えっと、それじゃあ、いわゆる肉欲の類を私に向けたりはしないと……?」
「もちろんですわ。聖女様を前にすると、わたくしの魂が満たされるのが感じられますの。これ以上の幸せはありませんわ……ッ!」
本気で満たされ切ったような、とろっとろに
うっわエロい、むしろこっちが肉欲を抱いちゃいそうだわー。
大丈夫、私はノーマル、私はノーマルだから。誰が何と言おうとノーマル。いいわね? OK? よし。
ふぅ。
告白された時はどうなるかと思ったけれど、あの様子なら、
だったら、今後は友人として、親愛の情を育てていけばいいよね。アクゥーヤさまがお友達になってくれるなんて、私も大歓迎だわ。想像しただけでもステキ。
ん?
残念、私はアクゥーヤさまにファンレターを送った中の一人だ。むしろ
◇
政変が終わってみれば、攻略対象は誰も残っておらず、私の逆ハーレム計画も消滅してしまったわけだけれど。
逆ハーレムなんて浮ついたことを考えずに、しっかり生きて行けばいいと思う。
ここはゲームの世界?
違うでしょ。シナリオも好感度も全く意味が無かったのだ。その時点で、既にゲームとは全く異なっている。
ゲームに似ているけれど、この世界は、今の私にとっての
うん。
どうにかこうにか、上手く生きて行こうと思う。
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