第30話
「相場さん、さっきの話の中で、お父さんから直接言われていないのは間違いない?」
先ほどまで静かに聞いていた愛原君が突然話し始めたのは驚いた。それに、相場さんの身の上話にも。
「うん。
父から直接は言われていないけど、母と祖父母は父にも話を通して同意してもらっているって言ってた。それに、父は出張で海外にひと月くらい出かけてるらしくて、まともに連絡取れないって。」
愛原君は何を知っているんだろう。
今の話を聞いていて相場さんのお父さんが出てこないことを確認する意図が全く分からない。
「俺は思うんだけど、その話のメリットって相場さんのお母さんとかんも相場家の人間にだけにある気がするんだ。
普通に考えたら、ほかの企業の御曹司とかを婚約者にした方が会社の利益になると思うんだ。それに、会社を継ぐ教育をしていることを考えると、今のうちに婚約者を決めて家に縛るのは違和感を感じる。
俺が考えるに、相場家の人間の考えであって、相場さんのお父さんの考えじゃない気がする。」
まるで答えを知っていて、辻褄を合わせていくような発言。
そして、その辻褄を合わせるような発言をしていると感じた人間はもう一人いる。
「でも、父は出張に海外に…。」
「それもおかしい。
なぜ、相場さんのお父さんが海外出張のタイミングでその話が出てくる?
普通、親戚と婚約とかならもっと早く話が出ていてもおかしくない。そう考えれば、相場家の人間が会社や名声を次代では取り返すためにしているんじゃないかと思えるんだ。
だから、相場さんのお父さんに連絡すれば今回の問題は解決する可能性がある。」
それは、直人だ。
まるで、大事な瞬間はわかっているかのようにアドバイスをしてきたり、春香の場所に行くように言ってきたりする。
「相場さん、とりあえず、俺らも協力するから思井さんの居場所だけ聞いてもいいか。いつまでも、思井さんを放っておくわけにもいかないだろう。」
違和感を覚えれば、いろんな事が繋がってくる。
「そうだね。
春ちゃんは入り口から見て右のオフィスにいるよ。
入口のテンキーの暗証番号は0823だから、甘江田君、行ってあげて。」
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