第15話
キッチンで春香が料理を作っている姿をリビングから眺める。
結婚したらこんな風景を毎日見られるのかと幸せな気持ちになる。
母が不在の時は春香が料理をしてくれていたので、いつも通りの光景のはずなのだが、なんとなく今はむず痒い感じがする。
チラチラ春香を見ていたら、春香もこっちを見てていたのか何度も目が合う。
そのたびに嬉しそうにするものだから、何となく気恥ずかしくなって自分の携帯に視線を落とした。
「真一、今日の夜ご飯は真一の好きな生姜焼きだからね。
楽しみにしててね。」
「え、本当!?
俺、春香の作る生姜焼きめっちゃ好きなんだよね。」
春香は料理が上手いので何が出てきても美味しいが、生姜焼きは春香の料理の中で一二を争うレベルで好きだ。
「真一が喜んでくれるなら、いつでも作るよ。
それと、炊飯しといてくれてありがとう、すぐ料理に入れて助かった。」
白色のワンピースに、黒っぽいエプロンをしている姿は少しだけメイドさんっぽくてかわいかった。
好きな人が自分のために料理をしてくれるという状況は嬉しいものがある。
「いや、そんくらいしかできなくてごめん。
あんまり料理できないから手伝いとかもできないし。」
いつも、座って休んでいてと言われるので、何かをしたいとは思うのだが何もできない。
かわいい春香のことを眺めているくらいしかやることがないのだ。
「今日はいっぱい嬉しいことがあったから、真一にいっぱいお返ししたいの。
だから、真一はゆっくりしてていいんだよ。」
凄く素敵な女性だと思う。
なんで、こんな素敵な子が俺の彼女に?と思うが、選んでもらった以上幸せにしたいと思った。
「ありがとう。春香。
俺も春香に沢山してもらってるから、お返ししたいんだけど。
なんか、してほしいこととかある?」
肩揉みとか、スイーツをおごるとかその辺しかできないだろうけど。
「じゃあさ、お願いがあるんだけど、いい?」
「うん。俺ができることなら。」
俺ができることなら大事な彼女のためだし、なんでもする。
というか、いつでもお願いされればできることはするが。
「今日は、一緒に寝たいの。
真一の部屋で。」
春香の発言は予想外だった。
勿論、男として誘いたい気持ちもあったし、一緒に寝たら我慢なんてできないことはよくわかっている。
「え、俺の部屋?一緒にってことは、一緒のベッドってこと?」
「うん。せっかく恋人になったから、離れたくない。」
かわいいことを言っているし、それがより俺の欲求を高めていることが分かっているのか。
「あの、いいんだけどさ…。
その、絶対に我慢できないと思う。だから、やめといたほうがいいと思うんだけど。」
春香の顔は朱色に染まっているように見える。
「大丈夫だから、一緒に寝よ?」
あの、襲ってもよいか。今。
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