第14話
彼氏彼女の関係になったという実感は全くと言っていいほどなかった。
でも、気持ちが浮ついていたのか、家に着くのは本当に一瞬だった感じがした。
「あれ?春香の家の電気ついてないけど、一花さんって今日なんか予定入っていたっけ?」
春香の家の電気が消え、真っ暗だった。
専業主婦の一花さんは基本家にいるし、電気が消えてることはめったにない。
「いや、聞いてないけど。
なんか言ってたかな、書置きがないか見てくるね。」
このまま俺の家で夕飯の予定だったが、一旦分かれることになった。
「また、後で」と声をかけつつ、帰宅して家に入った瞬間にはぁとため息が漏れた。
少しだけ緊張していたのだろう。体の力が抜ける感じがする。
今日買った衣服を自分の部屋にしまい、部屋着に着替える。
春香が家に帰っている間にお米でも炊くかとキッチンに立った。
さっと手を洗って、コメを研いで炊飯器のスイッチに入れる。
家事は最低限は母に教えてもらっていたので、米を洗剤で洗うようなアニメみたいなことはしない。
玄関から鍵の開く音に続いてドアが開く音が聞こえる。
はるかが家に来たのかと、玄関まで迎えに行った。
「春香。お帰り。」
少しだけ、春香の顔が強張っている感じがする。
何かに緊張しているのだろうか。
「あ、うん。真一、ただいま。」
「どうかしたの?」
「その、書置きはなかったから、お母さんに電話してみたんだけど。
お母さん、お父さんを連れて真一のお父さんのとこに遊びに行っているみたい。
美香さんと一緒に帰ってくるって。」
ということは、春香も家で一人なのか。
ふと、春香と今朝した会話が思い出される。
泊まるのは冗談だといった後に、何と言っていただろうか。
『お母さんたちが急に旅行に行ったりしない限り。』といったのではなかっただろうか。
「その、今朝言ってたことだけどさ。
一花さんたちが旅行に行っているなら、今日は、うちに泊まってく?」
心臓がバクバクとうるさい音を立てている気がする。
春香がうちに泊まったことなんて何度もあるし、二人きりで過ごすことなんて沢山あったのに、こんな風に緊張するなんてとも思う。
「う、うん。
泊まっていってもいいかな。」
春香の顔も赤い。
春香も緊張しているのだなと思った。
まぁ、緊張せざる負えないだろう。
だって俺たちは、恋人なのだから。
恋人がお泊りで二人きりとなると、なぁ。わかるだろう?
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