第5話 手紙と秩序
「親衛隊をクビになるなんて、ろくな男ではないね。なかなか首になんてなるもんではない」とネコは言う。
「クビになるのは簡単さ。規則を破ればいい。規則、法律、不文律。あそこにはルールが多すぎる。」
「ルールがなければ無秩序よ。あなたは無秩序が好きなの。」
「秩序ね……誰にとっての秩序によるかな」
「そういうものかな。あんた見かけよりも哲学者だね」
「そんなつもりはない。そりゃあ無秩序は嫌いだ。送った手紙が届かなかったり、給料の支払いが何ヶ月も平気で遅れたり、道端に今にも死にそうな病気の老人が横たわっていたり、そんなものが好きなはずはない」
「あなたにとってはそれが秩序なの。送った手紙が届くことが」
「ああ。重要なことだ。給料が決まった日に支払われるのもな」
「道端に病人がいるのは無秩序だから?」
「そうとも言えるし、そうでないとも言える。秩序のある世界では苦しんでいる人を放って置くことはないだろう。でもあれが自然だと考える価値観もある。病気の動物が川辺で死んでいることは自然なことだ。無秩序とはいえない。」
シーゲルは動物の例をあげたのが不適切だったかと気がつき謝る。「すまん。他意はない」
「もし手紙が無事届いていたら、私があなた達の都市に来ることもなかった。こうしてひとりで逃げ出すこともなかった」
「だから大事だって言ったろ」
ネコは同意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます