第5話 手紙と秩序

「親衛隊をクビになるなんて、ろくな男ではないね。なかなか首になんてなるもんではない」とネコは言う。


「クビになるのは簡単さ。規則を破ればいい。規則、法律、不文律。あそこにはルールが多すぎる。」


「ルールがなければ無秩序よ。あなたは無秩序が好きなの。」


「秩序ね……誰にとっての秩序によるかな」


「そういうものかな。あんた見かけよりも哲学者だね」


「そんなつもりはない。そりゃあ無秩序は嫌いだ。送った手紙が届かなかったり、給料の支払いが何ヶ月も平気で遅れたり、道端に今にも死にそうな病気の老人が横たわっていたり、そんなものが好きなはずはない」


「あなたにとってはそれが秩序なの。送った手紙が届くことが」


「ああ。重要なことだ。給料が決まった日に支払われるのもな」


「道端に病人がいるのは無秩序だから?」


「そうとも言えるし、そうでないとも言える。秩序のある世界では苦しんでいる人を放って置くことはないだろう。でもあれが自然だと考える価値観もある。病気の動物が川辺で死んでいることは自然なことだ。無秩序とはいえない。」


シーゲルは動物の例をあげたのが不適切だったかと気がつき謝る。「すまん。他意はない」


「もし手紙が無事届いていたら、私があなた達の都市に来ることもなかった。こうしてひとりで逃げ出すこともなかった」


「だから大事だって言ったろ」


ネコは同意した。

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