「姫が棒で叩かなかったら、オレ、喰い殺されてた。だから、姫を
純情な男の子は、娘のボディガードに雇われた。ところが、
「姫は、すっかり変わっちまった。けど、ホントはやさしい、いい
シュウは話を遮った。熱い感情の発露はごめんだ。家族のあやなど想像したくない。
凪沙が言っていた〈Aliceの断薬剤〉。それは、もしかして、本当に有るのだろうか。無いにしても、それをエサに鷹峰をコントロールできる──
「潮原組としては、姫さまを助けに行かせたくない。だからオマエを排除しようとした。後ろに隠れてるヤツの意向でな」
「後ろ?」ベンケイは、単に潮原の裏切りと思っている。「いったい誰が後ろに?」
「
「
「ECHIGOYAの業績は絶好調だ。快く思わないヤツもいる」
「ちくしょう。ハナシがデカ過ぎだぜ」
雷光が森を照らした。間を置かず轟音が落ちる。風が樹間を荒れ狂い、岩場を叩く雨がしぶきを上げる。
交代で15分ずつ睡眠を取ろう、とシュウは提案した。
ナノの助けを借りる強制睡眠──緊急措置だ。僅かな時間で傷も体力もガッツリ
先にベンケイを休ませ、次にシュウが眠った。
タイマー仕掛けのように目が開くと、ベンケイが逆光に立ち両腕を廻していた。
「起きたんスか?」
「ああ、ぐっすり寝た」たった15分だが、10時間も眠ったようだ。「オマエも調子良さそうじゃないか?」
「左肩、回復っすよ。7割ってとこ」顔をしかめながらも可動域を確認している。やる気満々だ。
雲間から陽の柱が幾条も射している。雨は霧のように細かく、風の叫びは止んでいる。
全滅した兵士の亡骸は一つ残らず消えていた。まるで嵐が洗い流したように。いや、データに還元され消去されたように──
樹々のむこう、城の尖塔を中心に雲一つない空がある。雲海を丸く切り抜いて、そこだけ真っ青な円が城の上を飾っている。まるで目印だ。ここへ来い、とでも言いたげに。
招かれているわけだ。
濡れた草を踏み森を貫いて、ブーステッドマン二人は城に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます