弾丸が当たれば、命中ポイントへ強化ナノが集結する。命中から1/1000秒遅れて、皮膚損傷部の硬度をダイヤモンド並みに高める。単発の弾丸なら真皮で弾き返し、裂傷しか残らない。だが、それは単発の場合だ。連射を受けるとそうはいかない。ナノの手が足りない。故に、対ブーステッド用にマシンガンの選択は正しい。ただ、やすやす撃たれるほどトロくはないが。

「お父サマが別の医者に診せたいとおっしゃっているんだ」シュウは困った顔を作った。

「そんなハナシは聞いてないよ、お客さん。お嬢はこっちで預かってる。別の医者にはアンタがかかりな。生きてたらな」バーテンはニヤつき、マシンガンを前に出して構えた。

 ボーイも折りたたみナイフをパチンと開く。さあビビれ、と口元が嗤う。に嫉妬しているのだ。

 シュウは視線でバーテンの左脚をロックオンする。ナノ通信でリンクしたジョーカーが標的を追尾し、極細レーザーを放った。

 糸のような熱線がバーテンの太腿を貫通する。殺傷力は高くないが、痛い。悲鳴をあげて跳び上がる。全員の目が逸れた。シュウは加速した。

 三秒後、男たちは床の上に寝ていた。呻き声一つたてない。

 スツールで固まった中年女に近づき、手首から情報端末リストデバイスを取り上げた。「ここで10分間じっと座ってろ。約束するなら何もしない」

 中年女はガクガク頷いた。いきなり突風が吹いたと思ったら、男たちが倒れていた。何が起きたのか理解できないでいる。ただのサクラだ。

 イモ虫みたいな形の頼もしい相棒──ジョーカーを天板下から回収する。

 凪沙を抱えて店を出た。

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