秘密(理名)

「懐かしかったな」


「うん」


「俊の待ち受け、まだこの誕生日だもんな」


「そうね」


「じゃあ、寝よかな」


「おやすみなさい、優生」


「おやすみ、理名」


チュッ…私達は、軽いキスをした。


私は、優生が眠ったのを確認して

起き上がった。


中学三年生だった俊と二人で過ごした五日間。


優生は、出張に行っていた。



「じゃあ、理名。おやすみ」


「うん、おやすみ」


私は、録りだめしていたドラマを見ながらソファーで寝落ちしていた。


「理名、こんな所で寝たら風邪引くよ」


この頃、お酒を飲めるようにまたなっていた私。


「うーん」


あれは、酔っぱらって見た幻だって事にしていたかった。


「理名、愛してるんだ」


告白をされていた。


「理名じゃなきゃ、俺、駄目なんだよ」


寝たフリを続けた。


虐待されていた友人が、昔おじさんを好きだった。


優しくて、優しくて、家よりいいって言っていた。


俊は、それと同じ。


それは、私への恋じゃない。


愛じゃないよ。


いつか、気づくから…。


「理名、無理なのはわかってるから…。」


そう言って、キスをされた。


動けなかった。


動けば、バレる気がした。


「理名」


そう言って、体にれられそうになって…。


私は、わざと反対を向いた。


胸をわられそうになった。


「理名」


背中に顔を埋められてる。


息がかかる。


背中は、弱い。


やめておけば、よかった。


「理名としたい」


ハッキリそう聞こえた。


いやいや、47歳のおばさんを掴まえて何を言ってるんだ。


「理名、お願い」


腰の辺りをわられる。


手を滑らされそうになって、私は起き上がった。


「ふぁー。寝ちゃってた。」


俊は、驚いて涙を拭っていた。


「理名、風邪引くよ」


「ごめん、ごめん。あれ?起きてたの?」


「さっき、トイレに来たら、ここで、寝てたから」


「そっか、じゃあ寝に行くね。俊も寝るんだよ」


頭を撫でてあげた。


「じゃあ、おやすみ」


「おやすみ」


俊は、立ち上がって二階に行った。


ホッとしていた。


と、同時に「ごめんね」が降り積もった。


俊は、私にとってもう子供だった。


色んな事があった。


俊と私達…。


その過程を経て、私の中で俊は子供だったんだ。


俊の両親には、「そちらで、見ていただけるなら助かります」と言われた。


何て、酷い親だと思った。


でも、そのお陰で私は家族ごっこをさせてもらったのだ。


大きくなりすぎちゃったかな?


私は、キスをされた唇を撫でる。


切なそうな声で、苦しそうに泣いていた。


ごめんね、受け入れてあげれなくて…。


それでも、邪険にはしなかった。


いつか、気持ちが変わるって思っていた。


親代わりは、いつか卒業するのだから…。


優生がいない。


だから、ちゃんとしなくちゃいけない。


そう思っていた。


「おはよう、理名」


「おはよう」


朝御飯を用意して、俊に渡した。


「理名、俺ね」


「うん」


「理名と出会えてよかったよ」


「うん」


「理名と優生さんがいなかったら、俺死んでたから」


そう言って、俊は笑った。


大丈夫、まだ大丈夫。


私は、そう思った。


学習しない私は、また酔っぱらってソファーで寝落ちした。


「理名、こんな所で寝たら風邪引くよ」


ボヤけた視界とボヤけた頭。


「理名、ごめんね」


ポタポタ涙が落ちてきた。


「止められないんだ。好きが」


「俊」


「理名」


俊は、驚いて涙を拭った。


「ごめんね、受け入れられなくて」


「理名、何言ってるの?」


「いつか、俊を大河内にしてあげるから」


私は、俊の髪を撫でた。


「だから、泣かないで」


涙を拭ってあげた。


「ズルいよ、理名」


「そうしてって、いつも泣きながら言ってたでしょ?」


「理名」


「だから、大丈夫」


優しく頭を撫でて、私はボヤボヤの視界の中、酔いがいっきに回って落ちたのを覚えてる。


俊、何か言ったのかな?


頬の涙は、拭ってあげたんだけど…。


何か、言ったのかな?

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