初めてのパーティー

理名と優生さんは、俺に初めてをたくさんくれたんだ。


スマホの待ち受けにしてる11歳の誕生日写真を見つめていた。


「出来たよ!」


テーブルいっぱいに並んだご馳走!


それが、全部俺に与えられたもので興奮した。


「いただきまーす。」


暖かい食事、暖かいお風呂、暖かい優しさ…。


このまま、理名といれたら幸せだ!


理名と優生さんの家族になれたら幸せだ。


「美味しい?」


「うん」


「よかったな!」


ニコニコ顔で、俺は理名の作ってくれた料理達を食べたんだ。


まだ、沢山残ってたけど…。


お腹がいっぱいで、食べれなかった。


「ケーキの分あけとかなきゃ」


「無理かも」


「じゃあ、ハッピーバースデーだけしようか?」


「そうだな」


そう言って、優生さんがケーキを持ってきてくれて理名と二人で歌った。


「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデーディア俊君、おめでとう」


「ふー」


蝋燭を吹き消した。


「写真撮ろう、三人で!」


「うん」


スマホを上手に固定して、写真を撮った。


「撮れてる?」


「いい感じ」


見せてくれた写真には、嬉しそうな俺が映ってた。


「食べれる?」


「うん」


そう言うと理名は、包丁とケーキ用のお皿とフォークを持ってきた。


カットされて、お皿にいれられたケーキにお誕生日おめでとう俊と書かれたプレートが嬉しかった。


「優生は、コーヒー?」


「うん」


「俊君は、ジュース持ってくるね」


「うん」


俺は、理名の子供でいたいと思った。


理名を好きな気持ちは、変わらなかった。


でも、理名は俺のこの気持ちを否定するし、優生さんを捨てて俺を選ぶはずはないし、俺を子供以上の眼差しでみていないし…。


「はい、ジュース」


「ありがとう」


「コーヒー」


「ありがとう」


「じゃあ、食べよう」


甘い甘いチョコレートケーキが、口いっぱいに広がる。


子供の味だ!子供の恋の味だ!


「美味しい」


「よかったな!」


「よかった」


理名と優生さんには、甘すぎるのがわかってた。中学になって、オペラを理名が食べさしてくれた。あの日食べたチョコレートケーキより苦くて…。

理名と俺じゃ、埋めようのない世界があるのにハッキリと気づいたんだ。


ご飯を食べ終わって、暫くして俺と優生さんは眠った。


目が覚めたら、理名もいたんだ。


俺はね、理名の唇にれた。


ゴンッ…。


「いたたた」


キスがしたかった。


「起きちゃった?」


「うん」


「トイレは?」


「行く」


「起きててあげるから、行っておいで」


「うん」


理名が、優しくて泣き出しそうだった。


トイレに行って戻ってきたら、理名は起きていてくれた。


「ギュッてして寝て」


「怖い夢、見たの?」


「うん」


俺は、理名にギュッて抱き締めてもらいながら眠った。


子供という特権を使った。


理名の体は、柔らかくて暖かくて気持ちよくて…。


でも、理名は俺を好きになってくれなくて…。


「おやすみ」


そう言って、頭を撫で続けてくれた。


優しくて、素敵な人


離れたくない、壊したくない、失いたくない。


次に、目覚めたら理名はもう布団にはいなかった。


俺は、スマホを見つめながら小さなため息をした。


「思い出してたの?」


茜は、俺の隣に座った。


「初めて、誕生日してもらった時をね」


「俊、いい顔してるね」


「そうだろ?大好きなんだよ」


「理名さんと優生さん?」


「うん」


「理名さんへの気持ち、失くせないんでしょ?」


「うん、茜もだろ?遠い親戚のおじさんだよな!」


「うん」


虐待されていた茜のヒーローだった遠い親戚のおじさん。


茜は、ずっとそのおじさんが好きだ!


茜にとっての初めては、全部そのおじさんだったんだ。


「相手されなかったんだよな!俺と同じで」


「そうだよ!それでも、好き。叔母さんも良介さんも」


「結婚式で、見たけど素敵な人だった。」


「でしょ?あの日、良介さんにキスしたけど!覚えてくれてるのかな?」


「俺もだよ。理名は、覚えてるかな?」


そう言いながら、俺と茜は手を握りあった。


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