[おとなと少女]

あの子がおとなになったのは

唇を染めた時? スカートを短くした時? 嘘をついた時?

いつのまにかその横顔は、おとなになっていた。周りと上手く合わせられる、賑やかで華やかで、嘘つきの匂いが染み付いていた。

そんな君は、つまらなかった。


唇を擦ったら、指が赤に染まっていた。君が塗った色。これが私の色? おとなに染まる色。

走り出した足はどこへ向かっているんだろう。歩道橋の上? 公園の滑り台? どっちに、どっちに行きたいの?

これが似合うとか、似合わないとか。相応しくないとか、子供っぽいとか、大人っぽいとか。

じわじわ苦しめる時間が皮膚を傷付ける。こうして皺が刻まれていくのね。


一歩足を前に出すだけで、大人に引きずり込まれそう。振り返ったら、悲しそうなテディベアがこちらを見つめていた。テディベアを持って歩いたら、綿が飛び出していた。


甘い、おもちゃ、かわいい、お人形。フリルのお洋服、いちご、お姫様、キラキラ。大事にされてきた宝物。

腕を引っ張られて、こっちへ来いと誘われた。怖くて抵抗した。笑われてもお人形と遊んだ。

嫌だ、嫌だ、そっちの世界は汚い。怖い。醜い。暗い。

成長できない、助けて





しあわせ

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