[与えられた世界]
ほら、ここに君の椅子。机の上には君の名前。君の名前はこれで、このクラスのここの席。それを名札に表しておこう。
僕は僕が分からない。なのに周りは僕をよく知ってるらしい。
あそこの家の子。お父さんはあの仕事をしていて、奥さんとこの間会ったの。子供は確かウチの息子と同い年で……。
僕の名前が書かれた紙。僕の住所が書かれた紙。僕の、僕の、僕の何かが沢山書かれた紙。
お母さんは僕よりもそれを大事にする。判子までつけて。僕にもはなまるマークが欲しい。
この学校で、この学年の、このクラスで唯一の僕。他の人は僕の立場になれないし、僕も他の席には座れない。
違和感しかなかった椅子が、僕に馴染んでいた。名前の順番だけでつけた番号を呼ばれて、元気よく答えていた。
僕の世界はここだけ。なんでだかは分からないけど、ここだけ。
ほら、この紙が教えてくれるよ。僕はこれだって。
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