第4話 存 在
彼と付き合って一ヶ月。
デートしたり、一緒に帰ったりしてみたけど、彼は私が望んでいる事を、あっさりとしてやりこなす。
男の子と付き合った事ない私にとって、絶対に好きになったりしないと言い聞かせていた。
それに彼は、どうやら遊び人らしく一部の人間しか知らないからこそタチが悪いのだ。
そんな彼は、私の心を夢中にさせようと奮闘中らしく、告白してきた時に自信ありげに私に言ってきては接して来るのだ。
「美津歩って、同居人いるんだって?」
「あー、うん。いるよ」
「君と同級生とか?1つ屋根の下で年頃の男女が一緒に暮らしてて何もないわけ?恋心が生まれたりとか成り行きでヤっちゃうとか?」
《あんたじゃあるまいし》
心の中で、つい突っ込みを入れた。
「ないよ!変な誤解しないで!お互いのプライベートはキチンとしてるの!干渉しない約束だから」
「へえー。まあ、今のうちだけなんじゃない?」
「ありません!」
「そうなんだ。あったら略奪愛とかしてみようと思ったけど」
「りゃ、略奪愛!?」
「なーんて、嘘だよ」
「………………」
そんなある日の事。
「ねえ、知ってる?愛神 美津歩」と、女子生徒。
「愛神さんなら、A組でしょう?彼女がどうかしたの?」
放課後、私の話をしている女子生徒。
偶然、耳にした悠志の姿があり、気になり足を止めた。
「その子、顔は特別可愛いわけじゃないのに、性格が男子に人気あるらしいよ」
「へえ〜、そうなんだ」
《アイツが?んなアホな!何かの間違いなんちゃうん?》
「この前もさ、私の友達の彼が彼女と話してみたらしくて、彼女良いよな?って、本カノ(彼女)の前で普通に言ったらしいよ」
「そうなんだ。彼女自身、そんなの全く意識してないんでしょう?」
「そうみたい。でも、何か嫌じゃない?自分の彼氏が本カノの前で平気で言うのって」
「まあ…でも、別に良いんじゃない?別に付き合うわけじゃないんだし。愛神さんも好きで、そういう性格してるわけじゃないんだから」
「そうだけどさ」
「肩持つとかじゃないけど、人それぞれだから」
通り過ぎる悠志。
そんなある日の学校帰り――――
「美津歩」
「あれ?久しぶりーーっ!ゆっこじゃん。どうしたの?」
私の友達の、月島優子(つきしまゆうこ)。
「ちょっと話があるんだけど良いかな?」
「うん、良いけど」
近くの公園に行く私達。
「何?」
「前にさ、私の彼氏、紹介したでしょう?」
「あ、うん」
「そうしたら彼、美津歩の事、気に入っちゃって困ってんだけど」
「気に入ったって言われても…私、その気ないし。ゆっこから言っといてよ」
「私じゃ駄目なの!ハッキリ、美津歩から言ってもらわなきゃ分かってくれないの!」
「………………」
「お願い…私、アピって出来た彼氏だから…それに…いつもそうだったの……」
「…えっ…?」
「好きになった人や、付き合えたと思ったら…みんな…美津歩の事、気に入ったりして…」
「…分かったよ!私から伝えれば良いんだね?時間つくるから呼び出しなよ」
「…明日、また、ここに来て!彼氏、連れて来るから」
「分かった。明日ね」
私達は別れた。
次の日。
「何?こんな所に呼び出して」
「ゆっこは?」
「俺だけで行ってくれって」
「………………」
「…そう…昨日、ゆっこから聞いた。私の事、気に入ったらしいけど、私は好きで、こんな性格してるわけじゃないから!私、あんたと付き合う気は一切ないから、ゆっこだけ見てやってくんないかな?それじゃ」
去り始める私をぐいっと引き止めた。
「ちょ、ちょっと!離し…」
背後から抱きしめた。
「や、辞め…」
振り返らせると、顔を近付けてくる。
私は両手で押し止めた。
「何、考えてんのさ!ゆっこが一人で行けって言ったの嘘なんでしょ!?ゆっこが連れて来るって言ってたのに、おかしいと思ったんだよね?」
「お見通しだったんだ」
「当たり前でしょう!?ふざけんなっ!」
私は走り去った。
「何、一人で来てんの?」
「あれ?優子、来ちゃったの?」
「信じらんない!どうして美津歩が良いの?今迄…いつもそうやって…美津歩の事、みんな気に入ってたり…気に入ったり……これじゃ…いつもと変わらないじゃん……」
彼女は、涙を流す。
「優子…ごめん…まさか…そんな事…」
彼は、彼女を抱きしめた。
二人は、良い感じになったのは言うまでもない。
その後、私は、そういう出来事が立て続けに起きて何度も断った。
そんなある日の学校帰り―――――
「あっ!」
グイッ
私の手を誰かが掴む。
ビクッ
「えっ?」
振り返る視線の先には2人の男子生徒。
「君だろ?隆から聞いたよ」
「性格がサバサバしてる女子生徒。愛神美津歩さんだよね?」
「…そう…だけど…」
《性格がサバサバ?私、そんな存在?》
「俺、隆の友達なんだけど、アイツが呼んで来いって」
「は?人に頼むな!自分で呼び出せって言っといて!それじゃ!」
去り始める私。
グイッと引き止められる。
「何!?」
「いいから付き合ってよ!頼まれてんだから連れて行かないわけにはいかないっしょ?」
「マジ頼むよ」
二人に手を合わせられる。
「………………」
私は渋々、付き合う事にした。
「一体、何なわけ?こんな所まで呼び出して」
連れて来られたのは、とある建物。
生活感があるような部屋でもある。
「相変わらずだね。美津歩。俺との事、本気で考えてよ」
隆人が現れ言ってきた。
「………………」
「私以外にも女の子は山程いるじゃん!」
「美津歩が良いから。連絡しても何の音沙汰ないから呼び出してもらったんだ」
「そう…でも…無理かも…だって…私以外にも彼女いるんでしょう?」
「あー、もしかして噂聞いた感じ?」
「告られる前から何となくだけど、告られて徹底的に調べさせてもらった」
「案外、大胆な事するんだね?美津歩…じゃあ…付き合う気なかった感じ?」
「どうかな…?ヤバイとは思う時無いわけじゃないけど…正直、自分に言い聞かせてたから」
「そっか…残念!」
グイッと両腕を掴まれた。
さっきの二人の男子生徒達だ。
「ちょ、ちょっと離し…」
《こんな事する為の呼び出しだったってわけ?》
グイッと顎を掴む隆人。
「な、や、辞め…」
「今まで何人か付き合ったけど、君が一番最高の女」
「付き合ったじゃなくて付き合ってるけどの間違い……っ!」
キスされた。
「……何?何か飲ませた…?」
「睡眠薬だよ」
「…えっ…?」
「何の為に…?」
「それは…もちろん、美津歩と1つになる為。お前ら席外しな!」
そう言うと再びキスをされた。
眠気が襲ってくる。
姫様抱っこされ、ベッドに乗せると、制服を脱がされる。
肌が露わになる。
「身体の関係を持てば、俺の女に過ぎないからね」
《や、やだ…こんなの…負けたくない…》
私は怖いのもあり、気付けば涙が溢れ落ちる。
「…美…津…歩…?」
スッと離れる隆人。
「………………」
「…悪い…」
横になっている私のベッド側に背を向け腰をおろす。
「…隆…人…?」
「…帰りな…好きな女の涙見てまで、しようと思わねーよ……」
「………………」
私はゆっくりと起き上がり、その場を去った。
「良かったんすか?」
「隆?ヤらなかったのか?」
「…マジ(本気)になった女の涙見てまで、しようと思わねーよ…どんだけ沢山の女いたって…愛神美津歩は…今まで出会った事ない女…」
「…隆…」
「遊び人に近い俺をマジにさせた女…お前ら、今日は俺に徹底的に付き合えよな!」
✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕
私は頭がボーッとするのとフラつく体と闘いながらも重い足取りの中、街中を帰る。
その途中――――
ドンと誰かとぶつかり、道路に転倒する私。
「………………」
「あっ!すんません…大丈……夫…美津歩…?」
私はゆっくり立ち上がり去り始める。
「美津歩…?おーい!愛神美津歩さーーん」
「………………」
「何やねん…アイツ…!…シカトかいな!」
「………………」
私は、そのまま帰っていく。
すると――――
グイッと腕を掴まれた。
「美津歩っ!大丈夫かいな?」
「…悠…志…?…えっ?あ、うん、大丈夫だよ」
私は掴まれた腕を離す。
「…じゃあ…」
再び、グイッと掴まれる。
「そうは見えへん」
「何言って…大体、関係ないでしょう?おたがいのプライベート干渉しないんじゃなかったの?」
「あー、そうや!せやけど、尋常じゃない姿を見て見ぬふりでけへん!」
「………………」
「何があっかは知らんし聞かへんけど、今のお前は危なっかしいんや」
「やだな~。お袈裟だよー」
私は笑顔を見せるも、下にうつ向く。
「…美津歩…?」
顔を上げ、再び笑顔を見せる。
「じゃあ…今回だけだかんね!」
私は悠志と手を繋ぐ。
「うわっ!何?何で手繋ぐん?」
「何となく……なんて…嘘だよ。駄目だよね…ごめん…」
私はパッと繋いだ手を離すも、
すぐに、悠志は私と手を繋いでくれた。
私達と肩を並べて帰る。
悠志は、海の方に向かっていたらしいけど……
海!?
疑問に思うも干渉しない約束。
しかしながら、ついつい、一応、尋ねるも
『ちょっとな』との返事が返ってきた。
だから、それ以上、聞くのは辞めた。
初めて手を繋ぐ
恋人でも
何でもない
ただの友達で
しかも……
ただの同居人
だけど……
落ち着くと思ったのには
嘘はない
悠志の手の温もりが
優しくて
私の気持ちを
癒やしてくれた………
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