第3話 悠志 と 私

「あら?美津歩、悠志君と一緒じゃなかったの?」



帰って早々、お姉ちゃんが聞いてきた。




「うん。わざわざ学校から家までとか一緒に帰る気ないし!朝夕、共に行動なんてする気ないって!お互い様でしょう?でも、どうして?」


「いや…最近…美津歩には、心開いているような気がしたから」


「えっ!?いやいや、何かの間違いでしょう?アイツが心開くなんて…あり得ないって!お姉ちゃん眼科に行って診察してもらいなよ」


「なっ…!美津歩っ!!」


「あーー、怒ったら駄目、駄目。お腹の子に悪いよーー」




私は自分の部屋に移動した。





「全く誰に似たのかしら?」






数日後―――――




「美津歩ーーーっ!!」


と、叫ぶ悠志の声が、家の廊下に響き渡る。




ガチャ


そして私の部屋のドアが思い切り開く。




「な、何?驚くじゃん!後、入る時はノックしてよ!着替えてたら元も子もないじゃん!」


「お前に色気なんて感じへんわ!それより!俺が残してたアイス食ったやろ!!」


「アイス?あー、これ?」


「あーーーっ!!それやっ!!人のアイス勝手に食うなや!!」


「だったら名前書いておきなよ!」


「この!クソ子供(ガキ)っ!!」


「何よ!!そういう自分だって16の、クソ子供(ガキ)じゃんかっ!」


「俺は、17になったわ!」


「16も17も同じじゃん!たかが1つじゃん!!」




私達は騒ぐ。





ある日の夕飯時―――――





ブ〜〜ン…


私達の食事中の所に、一匹の蠅(はえ)が、飛んでいる。




「何なの…?…コイツ…マジムカつく……」と、私。


「お前が好きなんやて!」と、悠志。


「は?蠅に好かれても嬉しくないし!」


「仕方ないやろ?お前の色気は蠅には分かるんちゃうの?良かったな〜?俺はサッパリ分からへんけど」


「あんたねーーっ!」




「はいはい。食事中よ」と、お姉ちゃん。


「そうだぞ!」と、孝夜さん。





その蠅にイライラしながらも私は食事をするも




「よっ!」




蠅をハシで掴む悠志の姿。




「やだっ!ちょっと!何してんの!?」


「蠅、捕まえただけやで?」


「ハ、蠅を捕まえたって……しかも箸ぃぃっ!?信じらんないっ!それ!あんたの箸だからねっ!名前、書いておいてよね!?」


「何でやねん!死ぬわけないやん!」


「死ぬ!」


「はあぁぁっ!?アホちゃうか?ほれっ!試してみぃ?」



私に蠅の挟まれた箸を渡す。



「油であげたら美味しいかもしれへんで!」


「バカっ!辞めてよねっ!あんたマジムカつくっ!!」


「トイレ行けや!ト・イ・レ」




私達は騒いでいた。





ある日の学校での事だった。




「愛神 美津歩さーーん!お客様やでー?」


と、私を呼び出す悠志。



「ちょっと!人の名前をフルネームで呼ぶの辞めてくれる?」


「別にええやん。減るもんやないやろ?」


「フルネームは辞めて!」



横切る私。




「男やで?」 



ボソッと囁く。



ドキッ




「お前も捨てたもんちゃうなー?」


再び囁く。



「あ、当たり前ですっ!」




廊下に出る私。




「はい」

「あっ!ごめん!ちょっと良いかな?」

「う、うん…」



私は呼び出された相手に連れて行かれるまま付いて行く


向かった先は、屋上だ。





「ごめん。こんな所にまで連れ出して」

「あ、ううん、平気。騒々しいよりも全然良いから」

「そうか」

「いや、実はさ用事あるのは、俺じゃなくて…」

「えっ?」



「ごめーん!俺なんだ」




無邪気な笑顔で言う男子生徒の声。


振り向く視線の先には




ドキッ



《うわっ!何?こんなイケメンいたんだ》




「えっ?あ、あの…」

「席外しな!」

 


《えっ…?今…》




「はい」と、私を屋上まで誘導した男子生徒。




《な、何?この人…別の顔持ってる?二重人格!?》




「ごめん。俺、こんな性格でさ。そんな怖がんなくてもいいから」


「いや…怖がるも何も…ちょっと驚いたけど…二重人格…」


「ある意味。ところで…君、彼氏いたりする?」


「えっ?」


「その反応を見た所によると、いない感じ?」


「…それは…」


「ねえ、俺と付き合わない?」


「えっ!?」


「初めて君を見掛けて可愛いなって思ってたんだ。性格も俺好みだし」


「えっ?性格!?でも…」


「別に恋人から付き合えなんて言わない。友達からゆっくりでいいんだ。お互いの事良く知らないしさ」 



そして私は、彼・梅阪 隆人(うめさか りゅうと)君と付き合って見る事にした。
















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