第2話 悠志の存在、ふたりきりの夜

「渡世!!渡世悠志っ!!」と、先生。


「はい…何すかー?」



眠そうに返事をする悠志君。



「授業中に寝るなんてたるんでるぞ!」


「そんなん言われても…俺、ここ終わってんねんもん…前の学校で済んでんねん」


「…済んでるからと言って、寝る必要はないだろう?」


「だったら学校に来なくてええの?そんなんしたら単位足りんくなるやん!」


「…お前は…あー言えば、こー言うで……」


「…分かりました…聞けばええんでしょう?続けて下さい」


「全く」



そして、授業再開し、授業時間はすぐに、終わり再び眠っていた。





「ねえ、美津歩、渡世君って肝っ玉が大きいというか…凄いよね?」



親友の、河奈守 春耶(かなもり はるか)



「えっ!?」

「あそこまでさ言えるのって凄いよね」

「あー」





私は悠志君を見る。

すると悠志君が偶然に振り向く。



ドキッ


何故か胸が大きく跳ねる。





好きとか、そういう思いはないけど、理由はある。





悠志君が、転入してきて数日後――――




「あの、私とお付き合いして下さい」


「…気持ちは嬉しいねんけど…君とは付き合われへん。俺、女の子苦手やねん」


「…そうですか…」



「すまんな。せやけど、君、可愛えーから、もっと俺よりも相応しい人現れると思うで?俺は…君を悲しませる事しかでけへんから…ほな」




去る悠志君の姿。




私は偶々見掛けたけど


彼は優しい表情で


申し訳無さそうに謝っていた




冷たかったり


優しかったり


意地張ってたり


様々な彼だけど




正直カッコイイと思う




そんな私は彼と同居して


何度も何度も


突き放されるも


彼と向き合っている


自分がいることに


気付いた



相手に対して


挑戦する自分がいる







そんなある日の事だった。




「美津歩、明日、孝夜と共通の友人の結婚式で、孝夜と行くから」


「そっか」


「お互いの両親も出かけるって話だから、悠志君と2人だから宜しくね」


「えっ?あ、うん…分かった…」






そして、次の日、学校から帰って――――




「まだ帰ってないのか?ま、いいか。アイツのプライベートだし、何してようが関係ないや」




その日の夜。



悠志君は帰って来ない。


時間は、夜9時を回っている。




「…アイツ…何して…ただでさえ誰もいないのに一人で怖いじゃん!携帯番号とか知らないし」




私は恐怖と闘いながら自分の部屋にいた。


そして、取り敢えず、お風呂に入っている時の事、リビングの方から物音がし、


私は悠志君だろうと思っていたけど、どうも物音が騒々しく、私はバスタオルで巻いて手にバットを持ちリビングに行く。




パチッ

リビングの電気をつける。


すると、目出し帽を被った3人の姿、3人は振り向く。




「あんた達、何して…人の家で何してるのさ!金目の物とか狙ったって家には何もないんだけど!警察(さつ)呼ぶよ!?」




カチッ


拳銃を向ける一人の人。





「お前ら探しな!たかが女にビビってんじゃねぇよ!さっさと探せ!」


「私の事、女だからって馬鹿にしないでくれる?」


「何?」


「どうせ、それもオモチャでしょう?私を驚かそうとしても、そうはいかないからね!」





プシュン



バリーン


花瓶が割れる。



ビクッ




「…えっ…?」


「これでもオモチャだというのか?」



《う、嘘……ほ、本物……!?》



「これでも偽物だと?」





そして、銃を向けながら歩み寄る一人の人。





「そ、それ以上近付いたら大声出すよ!!」



グイッとバットを掴まれる。




「は、離し…」




取り合いになる私達。



カラーン


バットが振り落とされ床に転がり、そんな私も転倒してしまった。




「きゃあっ…!った〜……」


「そんな格好で良い度胸してるな?近頃の女も色気あり過ぎなんだよな」




両手を押さえつけられた。



「や、やだ!離し…!辞めっ…!」




スッと私達の間にバットが出る。



ビクッ




「おっさん、人の家で何してんねん!」


「なっ…!」




慌てて離れる。




「良い年して何してんねん!」

「貴様…!撃つぞ!」

「撃ったら恨んで出てきたるで!?」




その直後、パトカーのサイレンが響き渡る。





「何…?パ、パトカー…?」

「そうやで?既に手配済みやねん。残念やったな」




3人は捕まり、現行犯逮捕となった。




「お前…なんちゅう格好してんねん!洋服くらい着ろや!」



そう言うと去って行く悠志君。


私は、洋服を着る為、お風呂場の脱衣場へと行く。


洋服を着ては、廊下に出ると腕を組んで立っている悠志君の姿。




ドキッ




「…悠志…君…」

「お前、女のくせに無茶苦茶な事すんねんな」


「し、仕方ないでしょう!?誰もいなかったんだし!てっきりあんたが帰って来たんだと思ってたけど、妙に騒々しかったんだから!」




スッ


悠志君の前を通り過ぎる。



グイッと引き止められた。


ドキッ





「何かあった時は遅いねんぞ!その事、頭に良く入れておきや!」




バッと掴まれた腕を振り放す。



「分かってるよ!だいたい、あんたが早く帰って来てくれれば…遅くなるなら遅くなるって学校で一言言ってくれたら、私だって怖い思いしなくて済んだんだよ!」



「…………………」



「遊んでたかは知らないけど…連絡先も知らないし…何も出来なくて……大人が誰もいないって事…知ってたんでしょ!?それなのに……」



「………………」



「…ごめん…今更、責めても仕方ないよね?プライベートだし、私が色々言う権利ないよね?…だけど…これだけは言わせて!家族として、もう少し悠志に心開いて欲しい…」



「………………」



「…ごめん…出しゃばった事…言って…」




私は、自分の部屋に移動した。




「………………」






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