第7話 天然なのか…無防備なのか…?




「あー、やっぱこれかぁ。直すより買った方が間違いないか……」


 故障の原因はすぐに分かった。けれどこれを直すにはパーツ店で代用部品を探してこなければならない。


 自分のものなら直せない部分ではない。だけど……。


 今回直しても製造年数からして別の原因でこれから何年使えるか分からないのなら、新品を買った方がいいだろう。


「なぁ、えーと、星野さん?」


「はい。分かりました?」


「やっぱり直すよりは買った方が今後楽だな。この後選びに行くか」


 ここからなら電車ですぐに買いに行けるし、午後もどうせ暇だから、設置と設定の時間を見込んでも十分だ。


「分かりました。本当にありがとうございます。ご飯出来ましたよ。お口にあえばいいんですが」


 チンとオーブントースターが鳴って、すぐに彼女は二人分お皿を持ってきた。


 きつね色にこんがり焼けたトーストにサラダとオムレツ。俺には外に食べに行かなくちゃ縁がないメニューだ。


「盛り付けも上手いもんだなぁ。料理得意なんか?」


「見た目だけですよぉ」


 それでも顔を赤らめてしまうのだから嬉しいのだろう。有り合わせのものだと分かっていても美味いと感じる。オムレツだってフワッと柔らかいから冷凍物ではなく溶き卵から作ったものだ。


「お飲み物、何がいいですか?」


「コーヒあるかい?」


「えっとー、どっかにありました。インスタントになっちゃいますけどいいですか?」


 一生懸命に背伸びをして戸棚からスティックタイプを取り出すと俺に見せてくれた。


「飲まないんか?」


「どうも苦くて苦手なんです。いつも紅茶です。お砂糖とミルクはどうしますか?」


「砂糖だけで頼むよ」


「はい。分かりました」


 食事が終わり、時計を見れば店も開いたころ合いの時間だろう。




「ちょっと着替えたいんで、待っていてもらえますか?」


 白いブラウスに黒のスカートだったから出かける用意ができていたのかと思えば、陽咲は恥ずかしそうに頼んできた。



 ほぼ初対面の彼女の着替えまで同席するつもりはなく、玄関の外で待つことにする。


「お待たせしました」


 10分くらい待った頃に陽咲は出てきた。


「あのー、星野さん?」


「はい? 似合いませんか?」


「いや、似合いすぎて……」


 先が続かない。正直鼻血が出そうだ。


 白いブラウスはそのまま。その上から薄いグレーの前ボタンのセーター。パステルグリーンをベースにしたタータンチェックのプリーツミニスカート。おまけに白のオーバーニーソックスと黒のストラップシューズときたもんだ。


 髪の毛も後ろの一部をリボンのアクセサリーでまとめて、化粧も薄くナチュラルメイク。


 身長は確か150センチとか言っていた。こんな組み合わせの破壊力なら、何人の男が撃墜されることだろう。


 いや、その前に並んで歩いているところを職質されないことを祈りたい。


「すげぇ……」


「昨日のとどっちがいいですかねぇ?」


 いや、間違いなく似合うという意味では文句なしに今日だ。もちろん相手の趣味にもよるだろうが。


「俺は今日だな。でもなんか誘拐犯に間違われそうな気がする」


 さすがに小学生には見えないので大丈夫だと思うが……。


「坂田さんになら、誘拐されてもいいですよ」


 とんでもないことを言い出す子だ。


「星野さん」


「あのぉ、名前でいいですよ? 私、昔から陽咲ひなたってフルで呼ばれること少なくて、いつもって略されてましたから」


「いきなりそれはなぁ……。陽咲さん……、うーん、陽咲ちゃんでいいか?」


 彼女を見ていると、どうも美人というより可愛いという表現が先に来る。


「ちゃんですかぁ? なんかイメージ変わりますね」


 そう言いつつも、嬉しそうにしている。


「分かりました。好きなように呼んで下さい。私もそうします」


 まったく、恥ずかしがり屋なのか度胸があるのかよくわからないけれど、この凸凹コンビで街に出ることになった。


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