EPISODE5 『真っ黒、になり切れないんですね。赤が見えます』
キュウカク、ショッカク、チョウカクの三人のいう今日のソレは、本当に主張が激しい類のものだと分かりました。ボクも意識を集中させる前から少し、妙な気配を感じていたのです。キュウカクの持つソレから放たれている色は、どす黒い色で、純粋な黒とは違った嫌な感じのするものでした。
キュウカクの持つソレを預かって、意識を集中させてみると、より顕著にソレはどす黒い色を発していました。抑えきれない強さが滲み出ているようにも見えます。他に奥の奥、何色かがチラッと顔を覗かせて、もう一度その色に意識を集中させてみました。
「……黒、になり切れないんです。奥の方、強くギラギラとした赤色が見えます」
だけど、とボクは言葉を続けます。
「恐らく皆さんも同じだったと思うのですが、意識を集中しなくてもあふれ出てくる主張の激しさですね、このソレ」
「そう、まさにそうなんです!」
と、キュウカクが言いました。その言葉に同意するかのように、ショッカクもチョウカクも深く頷いています。その様子を見てから、ボクは三人に感じたことを伝えました。
「ボクから見ても、このソレの主張の強さは相当だと思います。黒はもともと、本当に強い主張の時に出やすい傾向があります。……なんですけど、こう、奥に赤色が混じっているとなると、純粋な強さのほかに、なにかあるのかも、しれません」
あとこのソレを見ていないのはミカクだけ、とのことなので、ボクを含め四人でミカクの家へと向かいます。幸い、ミカクの家からそう遠く離れていない位置で四人揃っていたので、ミカクの家にはすぐにつくことが出来ました。
「ミカクー! ちょっといいー?」
ミカクの家はチャイムが壊れているため、ショッカクが外から大きめの声で家の方へと呼びかけます。するとショッカクの声に反応して中の方からガチャガチャと音がしたかと思うと、ミカクが家から顔を覗かせました。
「わー、みんないるのー!」
「ミカク、今日落ちてきたソレなんですけど……」
ボクは抱えたままでいたソレをミカクの方へと見せるように腕を伸ばしました。するとミカクがなんだか妙な顔をしています。
「……なんか、あんまり言いたくないんだけど。このソレ、すんごく独特な、めちゃくちゃ強そうな味の予感がするんだけど……」
ミカクはボクら四人に比べると、口に含むまで情報が限りなく少ないはずなのに、それでも“何か”を感じ取れてしまうくらい、このソレの主張が激しい様子でした。
「……正直にお話しすると、このソレ、ここにいるミカク以外の四人は全員、『主張が激しい』って言うことで意見が一致しています」
「おぉー……なるほどねぇー……」
「……とはいえ、アノコに伝えるには……さ? ミカクにも協力してもらわないとだし」
ショッカクが宥めるように声をかけると、ミカクは『そう……だよね……』と渋々、といった感じで両手を差し出してきます。ボクはその手に少しソレを少し分けました。
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