EPISODE4 『耳が痛ぇ……!』

 キュウカクからソレを受け取ったオレは、受け取ったことを後悔した。何の音かわからないけど、耳を貫いて聞こえるその音は、耳はもちろん頭の中にまで響いてきて、もう最悪だ。だけどちゃんとなんの音か、アノコに伝えるためにオレはギリギリのところでソレに意識を集中させる。

 「金属、音……?」


 金属音のような、それでいて機械音のような。高音で一定の周波数の音がずっとなり続けている。耳に突き刺さるような感覚まで覚えて『あぁ、限界だ』と思ってすぐに意識をソレから逸らした。だけど意識を逸らしたところで追いかけてくる音の暴力。これはかなりヤバい、そう思った時、抱えていたソレをキュウカクが引き取ってくれた。

 「大丈夫ですか!?」

 「チョウカク、スイッチ入れるよ!」


 ショッカクもオレのヘッドホンに手をかけてスイッチを入れてくれる。二人のおかげでほんの少しだけ楽になって、いつの間にか息を詰めていた自分に気づかされる。久しぶりに『持っていかれる』かと思った。

 「わりぃ、助かった……」

 二人はそんなオレの様子を見て揃って眉を寄せていた。心配をかけているのを申し訳なく思うのと同時に、それでも二人がいてくれて助かったと思った。


 やがて少し落ち着いてから、二人に音の説明をする。

 「かなり高音域の機械音だと思う。高すぎる周波数で金属音かと思ったけど、どっちにしても耳を突き刺すような高音域の周波数がずっと出続けてる感じだ。頭の中まで響いてくるから立ち悪いぞ、このソレ……」

 「……あぁ……、やっぱり相当なんだね、このソレ……」

 「……そうみたいですね」


 「おや? 皆さんお揃いで、どうされたんです?」

 少し離れたところから声が聞こえた。このしゃべり方は――……

 「あ! シカクさん、ちょうどいいところに!」

 「シカクー、見てほしいソレがあるんだ」

 二人のその言葉に珍しく眉をひそめたシカク。オレはその様子が珍しすぎて思わず聞いてみる。

 「シカク? なんかあったか?」

 「え、や、別になにかあった、というわけでは無いんですが……」

 歯切れ悪く言うシカク。その視線の先にはキュウカクの持つソレがあった。

 「今日落ちてきたソレ、っていまキュウカクの持っているのですよね?」

 「そうです、これ、結構主張強くて」

 「みんな結構、くらっちゃう感じなんだよ」

 「……ほんとにタチ悪いぞ、このソレ……」


 三者三様、しかしながら共通点は『主張が強すぎる』。そう伝えればシカクも『そういうことなんですね……』と眉を顰めたまま頷いた。

 「いや、意識を集中させる前から、こんなにも色がこぼれ出ているのはなかなかだと思いまして」

 そう言ってキュウカクが持っているそれに手を伸ばす。キュウカクはシカクの方へソレを渡した。

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