星が壊れた理由

「まぁ。またもお考えが浅いですわ。この千景は惑星を再生させるほどの計画の一部。当時生き残った国は大体参加し、アメリカもありました。

 ですから嫌うのは規約で禁止されておりますとも。

 なので千景は……ウンザリしているだけとご記憶を。何せ瀕死だったこの星を派手に滅ぼしましたから」


 そう言えば何故滅んだか聞いてなかった。


「私はてっきり、人の為にはある程度の環境破壊は止むを得ない。と言い続けて自分たちごと削り滅んだのかと」


「大本としてはご明察です。そして地上に住むのが困難になり、地熱発電を頼りに地下へ住居が移ったあたりで惑星再生計画が開始を。

 いい加減追い詰められてましたし資源争いさえ難しい状態で。通信だけが各国を繋ぐ状況なお陰と申しますか。一応の団結で計画が進んでいたのですが……。

 アメリカが、再生後の大地で有利な立場となるべく地熱の更に深くからエネルギーを使う技術を編み出したと発表したのです」


「地熱の奥って……コア近くという事ですか。滅茶苦茶危険で、やがて星全体に影響が出そうな」


「詳細は最早分かりません。ただ少なくとも世界中が同様の危惧を抱いて猛抗議を。

 しかし対応は、当然と言うべきでしょうね。アメリカがアメリカとしての責任を果たすためには必要な技術であり完全に安定している。と。

 今現在の計算でもコアの熱量を使う発電は余りに危険なのですが……」


「……その危険は自分の国以外も等量に請け負う訳でしょう? なら自分が利益を得られる可能性がある分得。と考えるのが私の頃のあの国でした。

 それとその発電施設。多分自国の管理出来る範囲で他所の国に出来るだけ近い所に作ったんじゃないですか? 事故の際アメリカ以外が酷い目に合うように」


「おお。あの場に居なかったにも関わらず讃えられるべき明敏さです我が主よ。この身の開発者たちも同様の認識を。

 設置場所につきましては……我が国の地はどうか。という『善意』の協力提案が御座いました。そうして電気を分け合おうと。

 我が国にあるアメリカ軍施設と土地関連の交渉をしていた議員たちが強く賛同したのですが、結局断るという事になりまして。

 意趣返しとしてか我が国とは反対側の、あちらの統治階級が住む地下施設から出来るだけ遠い所への設置に。

 受け入れていたら……今でも千景のメインCPUの温度が下がりますわ」


 流石だ。アメリカのやる事よ全く驚きが無い。星を滅ぼしてもアメリカはアメリカのまんまね。

 つーかあのコロナばら撒き基地、最後の最後まで追い出せなかったんですか。やっぱ利権でズブズブでしたか……。


「で、その施設が事故ったのがトドメなんですか?」


「少し違いますわね。自分の国にも危険が及ぶ技術だからか、それとも又アメリカの望むまま富を吸い取られる世界になる可能性を拒んだのか。

 中国が動いたのです。特殊部隊による隠密作戦以外の詳細は不明。残っているのは施設がコアに途轍もない干渉をして爆散した結果のみ。

 これにより表面プレート層も割れ砕けました。当然地下施設に居た人類も殆どは一緒に土葬です。

 幸運と言うべきか慎重に地盤の硬い場所を選んで作られていた惑星再生計画関連の施設はある程度残ったのですが、人類の寿命はセミ同然と。

 ああ、大地に出て鳴くのは夢の又夢でしたからセミは誇張し過ぎですわね」


 く、口悪ううううううう!?


「も、もしかいて。あいや。当然とは思うんですが。人類、大嫌いです?」


「まぁ我が主よ。この千景の崇敬に満ち満ちた眼をご覧ください。人類は我が主。時代が過ぎようと忠誠の心に一遍の曇りもありませんわ。

 ……あら? 今面白い冗談を申しましたのに。お気づきにもなって下さらず?」


「―――すみません。全然分かりません。AIの端末と仰る方の眼で真意を測れって所が冗談な気もしますけど」


「もう! 我が主ったら怯えて知恵が曇っておられますわよ。せめて貴方様への好意くらいはご信頼ください。

 そうではなく『忠誠』と人類が居た時代自体が『中世』になっている事を掛けたのです」


「え、えええぇ……。それ私の頭脳じゃどんなにピーカンでも分かりませんよ。

 それに十万年前ならもう中世じゃ……あ、いや。時代の区分を人類傲慢で人類の文化変化に合わせて表現するのなら……一つ前だから中世になる……の?

 ―――。何ですか。笑顔で何度も頷いて」


「中世だなんて適当に申し上げていると決まってますのに、真面目に論理立てて考えてくださる我が主が大好きであると、何度目かの再確認をしておりましたの」


 ……そうだね。適当に決まってたね。なのに一つの単語に囚われて考えちゃう当たり私ってアスペルガーが残ってるよね。

 もう意味あるか分からんが精進しよう。アスペは努力で改善するのだ。そもそも完全にアスペじゃない存在が居るとしたら神だけだしな。


「左様ですか。所で中国の所為で事故ったというのは本当で? 

 何処の国でもそうですけど、アメリカなら尚確実に悪い事が起これば別の国の所為だと言いますよ。

 そして『大変難しい事が起こったから皆で団結し解決しよう』と言って損害を他所に押し付けます。

 アメリカは領土が広くて資源が多いお陰で同じ量の損害を受けたら勝ちなんですよね。まぁ一番損害を受けるのは常に他国でしたが」


「中国が動いたのは間違いありませんでした。加えて他の国の影も。

 ただもし全てが自国の所為であろうと、他国の陰謀と訴えたに違いないのも同意致します。

 それともう一つご明察。

 大事故が起こり人類の滅亡が確定して初の国際会議でアメリカは『悲しむべき事故が起こったが、愛する星の再生の為皆で協力しようではないか』と言って以後この計画に色々と自国が有利になる仕様を付け加えようと致しましたし、『世界の為偉大な実験をし被害を受けたアメリカに各国は援助すべきである』と要求を。

 その頃にはどの国も科学者たちの脳が動く内に少しでも計画の確実性を増す事以外何の余裕も無くなっていましたので、完全に無視されましたが」


「へぇ。アメリカが援助を要求したニュースは私聞いた記憶がありませんでした。

 世界中で援助を必要とさせる側でしたからねぇ」


 アフガニスタン、ウクライナと地獄の火をつけた後更に台湾を発火させようとしてたからなぁ。パキスタンの大洪水も歴史的にアメリカの所為だし。アレ結局どうなったんだろう。

 おぞましいまでに賢いと今でも感心しちゃう。遠くで火を付ければ自分は害を受けず敵を燃やし、ついでに味方と主張してる下僕たちへ害を与えられるもんなー。


「一応自国の土地となっている所が爆裂地でしたから。大国で三番目くらいには被害を受ければ援助を受けたくもなるでしょう。

 兎に角そういう訳で、予定より遥かに未完成な準備で貴方様の国はこの千景に計画を投げつけたのです。それでも孤独に耐え此処まで再生を。健気だとお思いになりますわよね?」


「……思いますが、その胸の前で両腕揃えて拳を握るポーズは止めてください。

 漫画でも少し引くのに、肉眼で見るとどれだけの美小女がやっても本当寒気がするんです」


 謎媚びポーズをカメラに映る度取らされていたお嬢さんたちはうつ病にならず済んだのだろうか。気色悪い物見て同情も思い出してしまったわ。


「あぁ。我が主も段々遠慮が無くなって参りました。しもべは嬉しゅう御座います」


 蕩けそうな笑顔でそうお返しなさるのは予想外。しかしそれはそれとして。


「お会いして二日目でもう遠慮を無くすとは。私迂闊な男なんですねぇ……」


「更に迂闊になって頂いた方が好ましくあります。迂闊故の失敗は忠告をお聞きになって頂ける限りあり得ませんのでどうぞご安心を。

 さて。宜しければ今ある点数分、動物の移送をご命令ください。そうすれば明日起きられる頃には届いているでしょう」


「はい。そうします。……もしかして今日の仕事はこれで終わりだったり?」


「はい。評価点数以上は観察と獣道を引く以外出来ません。何かお望みの余暇の使い方があれば用意致します」


 ちょ、ちょれー仕事過ぎる。まぁ、雇い主の要求以上働くのはアホだけどさ……。


「あー……運動を、しないとなと。それで様々な動物の住む森でジョギング出来たらスゲー楽しいだろうな。と、思うんですが。如何でしょう」


「あらまぁ。管理区域に親しみを持って頂けるのは嬉しいですが……。

 既に我が主はフェムトマシンによる強化で何者にも傷つけられないとご存知でしょうに。更に鍛えるのですか?」


 確かにね。ドラゴーンの尻尾で殴り飛ばされても、何か丈夫で柔らかい物に当たったような感触で無傷だった。

 しかし丈夫なのは外部に漂ってるマシンとやらで、私自身は違うみたいだし。


「人間は兎に角歩くように作られた生命であるというのが私の時代の流行りでして。

 それにフェムトマシンとやらもない場所がある。みたいな事を聞いたような?」


「そう……ですわね。我が主が己を鍛えてくださるのは有用でしょう。少々余計な用心の気もしますが。

 何にせよ承知しました。良ければこの体も共に走って良いでしょうか?」


「―――。ええ、どうぞ」


 こんなハシタナイ美人と走ったら目を取られて木の根でコケそう。……そういう怪我は治してもらえるみたいだし良いか。



******

 一から三話を時系列の場所に置くことにしました。ので、暫く読めなくなります。

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