第9話 未来の勇者の専用武器は〇〇・・・
俺は手に入れた金で装備でも買おうかと武器屋に来ていた。
剣に槍、弓矢にダガーなど魅力的な武器がたくさん置いてあり目移りする・・・しかし勇者といえばやっぱり剣だろう、忘れている人もいるかもしれないが俺は一応勇者なのだ、というより勇者志望の青年が正しい。
というわけで、店に置いてあるミスリルソードを手に取り武器屋のおじさんの所に持って行った。ついに数々の死闘を共に潜り抜けてきたこのこんぼうともお別れだ。ありがとうよ。
「この武器を買うのかい? 2000ゴールドになるぜ」
「はい、買います!」
元気よく答える俺を武器屋のおじさんはしばらく見つめてから。
「この武器はあんたには装備できないけどそれでも買うのかい?」
突如訳のわからない事を抜かし始める。
「今なんと?」
帰ってきた答えは同じだった。
「だから、この武器はあんたには装備できないけどそれでも買うのかい?」
「装備出来ないっていうのは自分の体格では扱いきれないとかそういう意味ですか?」
「扱い切れないって言うかそもそもあんたじゃ使えないんだよ」
何だこのおやじ!?
剣なんて振るだけだろうが! 俺にはそんな事も出来ないとでも?
「使えますよ」
「いいや使えねぇ」
「使えますって」
「いいや、無理だな」
何だこのおやじ!
「見ただけでそんなの分かんないでしょっ?」
「分かる。なんとなくだがよ頭の中でこいつはこの武器は装備できないってびびっと感じるんだよ」
頭でびびっと感じる、何言ってるんだ意味が分からない。大丈夫かこの人、さっき俺はこの剣をしっかり手に持っていたんだぞ。手に持てるということはそれは装備したともいえる、あとは目標向かって振るだけだってのに使えないわけないだろ!
ゲームじゃあるまいし決まった武器しか装備できないなんて事ある訳ないんだし。
「おじさんこれ見えます?」
俺が剣を掴んでいるところを見せつける。
「剣を握ってちゃんと装備しています」
「じゃあ、俺にその剣で斬りかかってみな」
突然煽ってきた。
え・・・・それはさすがに抵抗があるんだが。人殺しなんて俺ごめんなんですけど。
たとえ相手が意味不明なこと言うおじさんでもそれだけで斬ってやろうと思える程沸点は低くない、俺不良じゃないし。
「いや、それはちょっと怖いので遠慮しときます」
丁重にお断り、しかしこのおやじは引き下がらない。
「大丈夫だよ、当たりゃしねぇから」
・・・馬鹿にしてる?
装備出来ないってのは『テメェが装備しても剣の無駄だから黙ってこんぼう振り回してろ』と遠回しに言っているとか?
俺が斬りかかったらさっと避けて笑うつもりか!? そうかいならやってやるよ! でもその前に・・。
「じゃあ万が一のことがあっても俺を訴えないという誓約書を━━━」
「つべこべ言わずさっさとやりやがれ」
どんだけ切られたいんだよ、若干引くぞ。しかしそこまで言われればしかたない、寸止めするつもりではあるがちょっと掠ったらごめん。
「えいっ!」
振り上げたミスリルソードをおやじ目掛けて軽く振るう、普通に避けられる速度だろうにそのおやじは動かない。
このままではおやじのつるピカ頭に切れ目を入れてしまう、そう判断しそろそろ止めようとした刹那、俺の剣の軌道が見えない力に押し飛ばされるみたいに横に逸れた。
「ほら、装備できない武器で攻撃するとなぜか攻撃が全く当たらないんだよ」
傷一つ無いつるピカ頭おやじが笑う。
もう一度斬りかかってみた、また逸れる。もう一度今度は全力で斬りかかってみた、おやじのつるピカ頭は綺麗なまま。
・・・・・・ちょっと待て! ちょっと待て! ちょっと待て! 剣が装備できないなんてマジすか! ありえないだろ、俺のイメージでは勇者といえば剣が装備出来て、最終的には伝説の剣で魔王を打ち倒すものだろう。
俺の理想は早くも崩れ去った・・・。
しかたない、剣が装備できなくても武器はまだまだ他にもいっぱいあるのだ、他のものにしよう。
実は俺、槍とか結構好きだし。
装備出来ない。
本当の事言うと弓とか格好良いなと思ってたんだよね!
装備出来ない。
ア、アサシンとか名前カッコいいしダガーでも良いかな・・。
装備出来ない。
せっかく魔法のある世界に来たんだ魔法を極めるのも面白そうだし杖にしよう!
装備出来ない。
己の体術で戦う武闘家良いじゃない・・よしガントレットだ!
装備出来ない。
「くそがっっ!!!」
店の武器全部試した、何も装備できなかった。ただ一つを除いて・・・・。
こうして俺は店でトゲトゲしたこんぼう(店で一番高いこんぼう)を購入した。
ちなみに防具は普通に装備出来ました。
ユウタは“トゲトゲしたこんぼう”を装備した。
ユウタは“鉄のよろい”を装備した。
異世界での生活はゲームの様に甘くありませんでした @katarea
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界での生活はゲームの様に甘くありませんでしたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます