第3話 エンカウント=死?

さて、これからどうしたらいいのか? とりあえず、町か村でも見つけないとまずい、とにかく移動しよう。


「まあ、来てすぐだしそんなヤバイ魔物なんかいないでしょ! あんな神様でもそこらへんはちゃんと考えてくれてるだろうし気長に歩いてれば人がいる所でも見つかるかな」


こんなフラグのような発言をしたことをすぐに後悔することになる。

夜喰いの森、この時の俺はとんでも出来事の連続ですっかりその事を失念していたのだ。




ひたすら言われた方に歩いて歩いて歩いて、ひたすらに歩いたのだが森、森、森で一向に町も村も見えてこない、それに心なしかより深い場所に来てしまっている様な気もする。夜の森なんて入る機会ないし正直舐めてた、暗いし足元には木の根が這っていて転びそうになるし風に揺れる木々のさざめきが何かの鳴き声にも聞こえていちいち怖い。

もうやだ・・。


「どうなってるんだ、これだけ歩いてるのになぜ町の一つも見えてこない、神様一体ここはどこなんですか?」


天を仰ぎ見て神に助けを乞うが返事は無い。

連れてくるだけ連れてきて後は放置とか何考えてるんだ?

説明書も無しチュートリアルも何もなしとか不親切設計が過ぎるだろとか愚痴を言いながら夜道を進んでいるとガサッと草むらから物音が聞こえてくる。

まさか女神様降臨、愚痴を連発する俺に遂に堪忍袋の緒が切れたとか!?


「ワンッ」


鳴き声から察するに犬らしい。

がっくりと肩を落とし溜め息。


「犬か・・・どうした、お前も迷子か? お互い大変だな」


がっかりはしたがこういう時に出会ったのも何かの縁、犬は嫌いじゃないし一人はちょっと心細かった、動物でも一緒にいてくれるなら少しは気が紛れるってものだ。

犬が静かに近づいてくる。


「よしよし、いい子ですね」


手を叩いてワンちゃんを呼ぶと素直に寄ってくる、異世界の動物はやけに人間慣れしているようだ。可愛い。

犬種はなんだろうか? 異世界だし見たことない犬かな? 暗くてまだ姿がよく見えない。

期待に胸を膨らまし待っているとようやくその動物の全体像が見えた。

毛色は漆黒、ふさふさの毛並みでピンと立ったもふもふの耳。

眼の色は真っ赤な真紅、そして特徴的なのは恐ろしく鋭いギザギザの歯、噛まれたら皮膚を破られて出血間違い無し。

物欲しそうに涎なんか垂らしちゃってるこの犬種はなーんだ?



はい、異世界産のヤバイ犬ですね!


すぐに逃げ出した・・・・それはもう全力で。


「いやいやいや・・・・・初めに遭遇するのはスライムみたいなもうちょっと弱そうな魔物ってのが常識だろうが~~!!!」


魂の叫びと共に後ろを振り返ると、逃げる俺の背後からどんどんその獣が距離を詰めてきていた。

人間が獣の足に勝てると思う? 無理に決まってんじゃん。

でも懸命に走った、だって追いつかれたら確実に死ぬからひたすら必死に走って、けどそんな努力無駄だった。

足を引っ掛け転んではい絶望。


そして、あ、死んだ、に繋がる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る