第7話 魔王

 やっとジメジメした森を抜けたと思ったら魔王城も思ったよりジメジメしているわね。この暗い天気さえなければ、絶景が見れると思うんだけどね~。エイジ? 何してるの? 魔王城に入るまでに紅茶を飲んで置いた方がいい? どうして? う~ん、エイジが飲んだ方がいいというなら飲むけどさ。ん~やっぱりエイジが淹れてくれる紅茶って美味しいわね。それにしても今日は特別に美味しい? うふふっ。隠し味を入れてくれたのね~。


 さて、リラックスも出来た事だし、魔王とやらを討伐に向かいますか!




 ◇




 セリナちゃん! 四天王らしいから気を引き締めてね! 行くわよ! 勇者スキル『セイクリッド・ブレイド』! っ…………まだまだ! もっと行くわよ! セリナちゃんはそのままエイジを守っていて! 勇者スキル『セイクリッド・バースト』! これで決めるわよッ! えいやっ!




 あれ? あんなにスキルを連発したはずなのに全然疲れない……? エイジ? 何にニヤニヤしているの? さっき飲んだ紅茶の効果で半日間色んな能力が付与されたの!? 凄い! やっぱりエイジの『生活魔法』って凄いわ! 生活するのに魔力を使うかは疑問だけどね。うんうん。でもおかげでスキルを連続で使っても全然疲れないし、魔力の自然回復も早いわ。――――やっぱりセリナちゃんもそうだったんだ! あんな強力な結界を長時間保たせていたから不思議に思ったのよ。


 エイジ! 紅茶もう一杯飲みたい! また飲んでも効果はない? いいの! 効果じゃなくて気持ち的に飲みたいの! えへへ~ありがとう!


 やっぱりエイジが淹れてくれた紅茶が一番美味しいわ~!




 ◇




 魔王城って思ったよりは明るいんだね。それにしても魔物は殆どいないのかな? 四天王達と一掃したので最後だったみたいね。


 ここが魔王の間ね…………っ! 貴方が魔王ね! ――――――何故魔族を攻撃するのかって!? そんなの当たり前でしょう! だって――――






 貴方達がうちのエイジの命を狙っているからに決まってるじゃない!





 …………え? 狙ってない? そもそもエイジって誰かって? あれ? 教団からは魔族がエイジの命を狙ってるって…………セリナちゃん? なにか分かる? 分からないか……でも魔王がいると人々が襲われていずれエイジの命も危ないかもですって!?


 ほら! やっぱり貴方が悪いのよ! うちのエイジを狙うなんて! 今すぐ成敗してやるわよ!


 四天王で疲れているから敵じゃない? ふふふっ! そんな甘くないわよ! だって、うちにはエイジがいるんだもの! 貴方の作戦なんてエイジの前では無駄よ! さあ! 私はまだまだ全力で戦えるわ! 行くわよ、セリナちゃん!


 勇者聖女合体スキル! 『セイクリッド・ヘヴンズソード』!


 どうよ! エイジのおかげで魔力が全然減らない上にもっと強くなった私とセリナちゃんの合体スキルよ! それにしても練習していた時よりも遥かに強くなったわね。大体10倍くらい強くなったのかな? やっぱりエイジの力って凄いわね……まさか魔王を一撃で倒せるなんて、思いもしなかったよ。


 エイジ~! 無事魔王を倒したよ~! ありがとう~! えへへ~ううん! これも全部エイジのおかげだし、あの紅茶の能力が無かったら、とても危なかったわよ。うふふ。これでエイジの命を狙う魔王もいないし、平和に暮らせるね!


 あ、セリナちゃんも一応ありがとう。もう帰っていいわよ。え? ここから帰り道が分からない? じゃあ、ここで一生住めばいいんじゃないかしら。私はエイジと行くけどね~。


 え!? エイジもここで住む!? なんで!? セリナちゃんを一人に出来ない? …………やっぱりあの巨大な双璧をもぎ取るべきかしら…………もう~二人とも! 一緒に帰るわよ! あはは~セリナちゃんったら大袈裟ね。本当に置いて行くわけないでしょう! そんなに泣いて喜ばないで~。ここにもう用はないから――――――


 っ!? エイジ! 危ない! 誰よ! うちのエイジに短剣なんて投げたゴミは!


 あら? 小さな女の子が出て来たわね。なに? お父さんの仇? それは言いがかりよ。だって貴方達が先にエイジの命を狙ったんだから、貴方達が悪いわよ。


 仕方ないわね……こんな子供達を放っておけないし、この子も連れて行きましょう。


 えっ? 仇を取ってやる? いいわよ別に。いつでも挑戦は受け付けるから正々堂々と掛かって来なさい。でも今はだめ。貴方はまだ小さいんだからもうちょっと大きくなってからね。


 エイジ! この子も連れて帰りましょう! 角とかもないし、肌も人と同じ色だから誰も気づかないわよ。それじゃ決まったら早速帰りましょう~!



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