第4話 聖女

 初めまして。私が勇者のリンと言います。こちらは幼馴染のエイジです。


 …………聖女セリナ様ですね。様は付けなくていい? いいえ、そういう訳には行きません。では挨拶が終わったので、これでお暇させて頂きま――――


 え~だって…………エイジったら、さっきからずっと聖女様の胸ばかり見てるじゃん。え? 見てない? いや! 絶対見てた! あの豊満な胸に釘付けでした! 私がエイジの視線の先を見誤るとでも思っているの? ……ふふっ! ほら! やっぱりそうじゃない。はぁ…………どうして男って胸にばかり目が行くのかしら……私も少しくらいはあるはずなんだけど…………。


 ん? これは失礼しました。聖女様。いえ、私の胸は貧相ですから仕方ありません。はい。貴方は大きいですね。ではさようなら。


 え~! もう挨拶終わったしいいじゃない! 元々挨拶するだけでいいって言われてるから、私が勇者でも彼女が聖女でも私には関係ないの! ……勇者は魔王を倒すのが責務? そんなの聞いてないわよ! なんで私がそんな事をしなければいけないの? 勇者だから? じゃあ、勇者やめます~。


 いいえ。聖女様はお気になさらないでください。そのままその豊満なお胸で魔王を討ってください。


 エイジ! また聖女様の胸を見たでしょう! え? 私が胸を強調するから見てしまうじゃんって? そ、そんなに強調してないよ! えっ? してた? でも僕はリンちゃんの胸も慎ましくて好き? えへへ~うんうん! それを早く言いなさいよ!


 それで聖女様。私達になんの用ですか? …………ほぉ……魔王を倒したいから力を貸して欲しいですか……でもどうして私がそれを手伝わないといけないのですか? 勇者だから? 違う? …………このままでは魔王にエイジが殺されちゃう!? 聖女様。その話、詳しく聞かせてください!




 ◇




 ということで、この三人で旅に出る事にしました!


 え~だって! 私はエイジ以外とは旅したくないの! あのいけ好かない笑みの剣聖とやらも、やさ男みたいな弓聖も、変なメガネをした賢者も興味ないし、視界に入れたくもないの! だからこの三人で旅をします! エイジには決定権はありません~。


 旅は危険が伴うんじゃないかって? そりゃ危険でしょうね。でも私の隣が世界で一番安全でしょうから、エイジをどこかに預けるなんて出来ないわ。え? 一人で暮らしていける? 生活魔法があれば何とか生き延びれる!?


 エイジ? いい? まずエイジは朝起きれないでしょう? 料理は出来るけど、食材を買えないじゃない。いつも冷蔵庫にある食材で料理してたじゃない。え? それは余った食材を使い切る方がいいから? そうだったの!? てっきり、毎日家に籠ってゲームばかりしてたから買い物も出来ないのかと思ったよ? あははは~ごめんごめん~そんなに怒らないでよ。それはともかく、私の隣が一番安全なんだから、エイジをどこかに預けるとか残して旅に出るとかはありません~それなら私も出ないわよ。それに聖女のセリナちゃんも一緒に行ってくれるんだからいいじゃない。


 いつの間に名前呼びって? 何だか私達二人が仲良いから羨ましいってさ。だからエイジも名前で呼んで欲しいみたい。あ、それとセリナちゃんって極度の男性不信らしくて、男とは言葉も交わせられないらしいから、困ったときはエイジがちゃんとガードしてあげるのよ? ……うんうん。基本的には私が一緒にいるけど、私はエイジの世話で忙しいから、エイジはセリナちゃんを見てあげてね。



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