第31話 勉強
その日から兄さんの野球の特訓が始まった。
放課後学校から帰ってきたら、近所の公園に行ってキャッチボールやゴロをとる練習、ティーバッティングや素振りなどいろいろな練習をした。
私も最初のころはキャッチボールもできなかったけどなんとかキャッチボールできるくらいには練習した。
毎日日が暮れるまで兄さんの練習を手伝った。
兄さんはいつも私に
「いつも日が暮れるまで野球の練習を手伝ってくれてありがとうな、本当にいつも助かってるよ」
「うん! お兄ちゃんが頑張ってるんだもん、深雪も手伝いたくなるよ!」
「ははっ、本当にありがとな。 俺はこんな素敵な妹をもってしあわせだよ」
そう言って、私の頭を優しく撫でられるのが私は大好きだった。
◇
それから兄さんは練習の成果もあってかどんどん上達していった。
それとは裏腹に私は勉強がとても苦手だった。
そんな私に兄さんが
「いつも、練習手伝ってくれているしな。 お兄ちゃんが勉強を教えるよ」
「え? でもお兄ちゃん、勉強はそんなに得意じゃ………」
「ははっ、そんなことはないよ。 いつも練習を手伝ってくれるんだ、それぐらい恩返しさせてくれないか?」
「うん。 それじゃぁ、お兄ちゃんお願いしてもいい?」
「ああ、もちろんだ」
ということがあり、兄さんに勉強を教わることになった。
兄さんは別に勉強が得意というわけではなかった。
だから、大丈夫なのかな?
という心配とは裏腹に兄さんの教え方はすごくうまかった。
それは学校の先生なんかよりも何倍も。
だから、私の学力も普通ぐらいにまで上がっていた。(元々は最下層だったから快挙である)
でも、なんでそんなに教えるのが上手なのだろう?
このころの私は疑問に思った。
なぜなら、このころは学校から帰ってきたら野球の練習をしてから帰ってお風呂に入ったり、ご飯を食べたりいろいろなことをしたら9時、それから一時間ぐらい私は兄さんに勉強を教わっていた。
その一時間の勉強で私の成績は上がっていったわけだ。
ちょうど疑問を感じ始めた時ぐらいっだただろうか。
夜十二時ぐらいにトイレで目が覚めた私は兄さんの部屋の前に通りかかった。
その時兄さんの部屋のドアが少し開いておりその隙間から
「ん? 電気がついている………?」
そんな疑問を持った私は兄さんの部屋の中を見た。
するとそこには
「にい…さん?」
部屋の中では兄さんがデスクライトをつけたまま、勉強机の上で寝ていた。
ついさっきまで勉強していたのだろうか?
でも、机の上で寝ていたら風邪をひくかもしれない。
そう思い、私は兄さんの部屋に入り毛布を掛けてあげようとした時だった。
兄さんの勉強机のものが目に入った、その本を見て私は驚いた。
その本の名前は
『三年生算数』
『分かりやすく教えることが出来るようになる本』
だった。
「まさか、兄さん……私のために………?」
その本にはたくさんの付箋や書き込みをしていた。
恐らく兄さんは私のためにどうやったらわかりやすく勉強を教えることが出来るようになるのかや、私の学年の勉強の復讐をしてくれていたのだと思う。
「道理でお兄ちゃんの教え方がうまかったわけだ………」
兄さんは私のためにこんな夜遅くまで私のために復習や勉強をしてくれていたのだろう。
そんな優しい兄さんが、私はとても愛おしく感じたのだった。
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