第30話 低学年
私はブランコの一件から兄さんのことが大好きになった。
小学生になってからもそれは変わらなかった。
兄さんはかっこよくて、私のことを自分のことのように喜んでくれるし、何より私に優しかった。
学校の男の子は何だか下品で優しくないし、とても子供っぽいのに比べて兄さんは大人っぽかった。
例えば、小学校低学年のころだけどよく一緒に遊んだ。
それは外でも遊んだりもしたし、家の中でもよく遊んだ。
低学年のころは兄さんは同学年の人とほとんど全くと言っていいほど、遊んでなかったのだ。
その理由はそのころは知らなかったけど学校での兄さんと私の前での兄さんは全然違うらしかったららしい。
家で私と一緒にいた時の兄さんは
「深雪、今日はなにして遊ぶ?」
「う~ん、それじゃぁ縄跳びで遊びたい!」
「ああ、いいぞ。 それじゃぁ、一緒に公園に行こうか」
「うん!」
「危ないから手をつないでいこうな」
「は~い」
みたいなかんじで優しくてかっこいい兄さんでよく一緒に遊んだ。
でも、学校の時の兄さんはそうではなかったらしく、人の気持ちを考えず、人に迷惑をかけていたらしかった。
兄さんも子供だったということだろう。
それでもそんな私に優しい兄さんのことが私は大好きだった。
私が二年生で兄さんが三年生に上がったころ父さんが
野球をしてみないか? ほら、運動するのはいいことだろ
だからほら、体験だけでも行ってみないか?」
と言い、兄さんは少年野球チームに入った。
兄さんは土日祝は全部野球三昧で私はよくお父さんと一緒に兄さんのれんしゅうをみに行った。
兄さんが、頑張って練習している姿はかっこよくて、ずっと見ていられて飽きることはなかった。
それから一年が経ち、監督が代わたきぐらいのころだろうか。
兄さんが私に
「深雪? お兄ちゃんの野球の練習を手伝ってもらってもいい?
深雪が手伝ってくれると本当に助かるんだけど……」
と、兄さんが私に頼んできたのだ。
兄さんは野球を初めてまだ一年だったこのころはまだまだ兄さんはそこまでうまいとは言えなかった。
だから兄さんは野球をもっとうまくなるようになりたくて私のことを頼ってくれたんだと思う。
私は、兄さんが何かを頑張っているところを見るのが好きだ。
その中で兄さんが野球を頑張っている姿はことさら好きだった。
それで私のことを頼ってくれた。
それがうれしくないはずがない。
だから私は笑顔で
「うん! 任せてお兄ちゃん。 深雪がお兄ちゃんの野球の練習手伝ってあげる!」
と言った。
私の言葉を聞いた兄さんの顔は本当に嬉しそうで、私まで笑顔になった。
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