第29話 信頼
私と兄さんは最初から仲がいいというわけでもなかった。
とは言っても仲が悪かった期間なんか二回しかなかったが。
その最初の期間が私がちょうど物心がつき始めたぐらいの時だった。
私は自分で言うのもなんだが記憶力がいい方だと思っている。
だから、物心がつき始めたころ………四歳から五歳ぐらいのこともそれなりに覚えている。
ちょうどそのくらいのころ、両親は私にかかりきりだった。
今思うと、私は両親をずっとかかりきりで兄さんは我慢していたことが多かったと思う。
だから、そのこともあって兄さんは私によく嫌がらせなど、今に思えばかわいいことだがおもちゃを隠したり、私のことを無視したりなどのことをしてきて私も兄さんのことがあまり好きではなかった。
でも、そのころの関係は突然終わりを告げた。
あれはちょうど、おじいちゃんがなくなったぐらいのころだ。
その時ぐらいから兄さんは私に嫌がらせをしてこないようになり、私に優しくなった。
もちろん、私は今までのこともあって最初から兄さんに心を開いていたわけでもなかった。
でも、その時は不意に訪れた。
私と兄さんが二人で公園に行った時のことだった。
このころの私はは結構人見知りで兄さんの後ろをちょこちょこつい来ているような女の子だったがあんまり兄さんとは話すことがなかった。
「おい、おまえブランコかわれ」
公園で私がブランコで遊んでいる時、男の子が急に変われと言ってきた。
しかし私は乗ってから全然時間がたっておらず、その男の子は乗ってからすぐに変われと言われたのだ。
私は無視してそのままブランコで遊んだ。
それからしばらくの時間が経ち、私はブランコから降りた、その時
「おまえなんで、さっきブランコをかわらなかったんだ」
ブランコから降りたその時さっきの男の子が私のことを突き飛ばしたのだ。
私は最初何が起きたのかわからなかった。
押されて尻餅をつき、痛みが広がってきて初めて私はさっきの男の子に突き飛ばされたということが分かった。
その時私は恐怖を感じた。
また自分が傷つけられるかもしれない。
痛い。
怖い。
でもそんな感情を抱きかけたその瞬間、
「おまえぼくの、いもうとになにしてる!」
兄さんがその男の子に向けて思いっきりこぶしを振り下ろした。
ゴツン!
その男は尻餅をつき、兄さんは私にに体を向けた。
「だいじょうぶか⁉ けがしてないか? だいじょうぶ、おにいちゃんがまもってやるからな!」
兄さんがすぐに私に駆け寄り私のことを心配してくれた。
「おにいちゃん!」
私は兄さんに抱き着いた。
さっきの恐怖が遅れてやってきて、兄さんの胸の中で私は泣いた。
兄さんは優しく私のことを優しくなでながら私のことを突き飛ばした男の子に
「おい、おまえ! みゆきのことをいじめるならおれがゆるさないぞ!」
俺の言葉を聞いたその男の子は泣いて家に帰っていった。
「おにいちゃん、ありがとう」
私は心からの言葉を兄さんに言った。
この時兄さんのことは信頼できる。
その時から私は兄さんのことが大好きになり兄さんに懐くようになったのだった。
まぁ、その後その男の子とその子のお母さんが謝りに来ていろいろあったのはまた別の話だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます