第26話 告白の返事4


 「に…い……さん?」


 そこには呆然とした表情になっている深雪がいた。


 「み…ゆ……き?」


 俺は混乱状態になっていた。

 え? 今のもしかして見られていた?

 それになんでこんなところに深雪が?

 俺が深雪になんて言い訳しようかと考えていると深雪は

 「え、えーっと……ご、ごめんなさい。 ま、まさか兄さんに彼女がいたなんて……」

 「い、いや、深雪。 これは違うんだ!」

 「わ、わかってます。 そうですよね、兄さんになら恋人の一人や二人いたっておかしくないですもんね」


 なんとか笑みを張り付けているかのような表情で、深雪は俺にそれ以上の言葉を拒絶するかのようにまくしたてた。


 「ご、ごめんなさい!」


 そう言って深雪は走って行ってしまった。

 俺の見間違えかも知れないが深雪の目には涙が浮かんでいるかのように見えた。


 「み、みゆき!」

 「赤坂君!」


 俺が急いで深雪のことを追いかけようとしたら、三輪に引き留められた。

 三輪は困惑した表情で

 


「赤坂君、これはどういうこと? 赤坂君が妹さんと仲がいいのは知っていたけど………あの反応はまるで……」


 三輪はそのあとの言葉を発しなかった。

 それは俺も同じ事を思ったからだ。

 今まで深雪は俺のことを慕ってくれているだけだと思っていた。

 それは中学生の頃のあの日から深雪は変わったからだ。

 それからは俺にべったりだったのも、もしかして兄として慕っているのではなく、俺と同じ……なのか?

 そう思うと居ても立っても居られない!

 今すぐ追いかけたい気持ちをぐっと抑える。

 深雪の前に先に三輪だ。

 だから三輪とのことに決着をつけよう。

 そして俺は三輪に向き直り、口を開いた。

 

 「三輪。 三輪の気持ちはすっごく嬉しかった」

 「うん」


 俺の真剣な雰囲気がわかったのだろう。 

 三輪はさっきの動揺した雰囲気から一変して真剣な表情に戻った。


 「三輪が小学生の頃からずっと俺のことを思ってくれてこんなにも美人になったのは素直に尊敬する」

 あの小学生の頃からここまで変わるには相当の努力と苦労があっただろう。

 それに初めての告白だ、うれしくないはずがない。

 でも、でもだ!

 俺はその気持ちにこたえることはできないんだ。


 「でも、ごめん俺には好きな人がいるんだ。

 だから三輪と付き合うことはできない」


 俺は告げた。

 たとえ、深雪と結ばれなかったとしてもいい。

 ただ今だけは一緒にいられればいい。

 でも、今はまた違う可能性が出てきた!

 だからこそ、三輪とは付き合えない。


 「そう。 ご、ごめんね急にキスして。 嫌だったよね。 でもね、私が赤坂君に救われたのは事実だから……自分に自信を持ってね。

 私は赤坂君が幸せになってくれたらそれで満足だから………だから私はどんな形の恋でも応援するから! だから行ってあげて、あの子のもとに」

 「あ、ああ!」


 そう言って俺は屋上を去った。

 三輪の表情は付き物がとれたかのような笑顔だった。


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