第25話 告白の返事3


「赤坂君!」


 名前を呼ばれた瞬間手をグイっと引っ張られて、後ろに向き直った。


「三…輪………?」


 俺は三輪の顔を見て驚いた。

 三輪の宝石のようにきれいな瞳から涙があふれていたからだ。


「赤坂君! 私のことを助けた時の理由は分かった。 でも、でもね! 赤坂君は私のことを助けてくれたわ!」

「それは俺の自己満足で………」

 「自己満足でもいいの!」

 「…………」


 三輪の必死の剣幕に俺は圧倒される。


 「たとえ赤坂君が自分の自己満足で私のことを助けたとしても、私を……私のことを助けてくれたのには変わりないわ!」


 三輪の涙は美しい夕日に照らされ、一種の彫像のような美しさを発していた。


 「私はね、あの時世界に絶望していたの。 悪意にさらされても、誰も私のことなんか救ってくれなかった。 でも! 赤坂君は私のことを救ってくれた。 助けてくれた! もし、それが自己満足だったとしても私のことを助けてくれたのは、三輪………いいえ、最上凛のことを助けてくれたのは、絶望の淵から救ってくれたのは赤坂君に違いないわ」

 「そ、そうだとしても俺はたまたま三輪のことを、あの時に助けただけだ。 だから……」

 「赤坂君」

 「お、おい……っ!」



 三輪は俺の手を取って自分の胸に当てさせた。

 手には至高の感触を感じられた。

 

 「どう? 私今こんなにもドキドキしてる」

 「あ、ああ」


 俺は初めての胸の感触にどぎまぎした。

 ま、まだ深雪のも触ったこともないのに!

 って、違う三輪はそういうことを言っているんじゃない。

 などと俺は内心かなり焦っていたが三輪は話を続ける。


 「たとえ、赤坂君が自己満足のために私のことを救ってくれたとしても、私の気持ちは本物だから!」


 三輪の目が俺の目を射抜くように俺の目を見て言った。

 そ、そうか………。

 いや、最初から三輪の気持ちが本気だってことは最初から分かっていた。

 だが、その気持ちにこたえるのから俺は逃げようとした。

 俺の答えは最初から決まっているのだから。

 自分の醜さを相手に言い、それで失望して自分から気持ちを引いてもらった方が楽だからだ

 でもだからこそ、ここまで俺のことを思ってくれた三輪にはきちんと自分の気持ちの返事を伝えよう。

 俺は生きる気力をなくし、絶望の淵から俺を救ってくれた、赤坂深雪のことが好きなのだから。

 だから答えよう。 


 「三輪、君の気持ちはすごいうれしい。 でもごめん……」


 きみとは付き合えない。 

 そういおうとした瞬間だった。

 俺の唇に温かい感触が当たった。


 「え?」 

 「ふふっ、ごめんなさい。 気持ちが抑えきれなかったの」


 俺はキスをされた。

 ファーストキスだった。 

 その時だ。

 キィと、後ろに物音がした。

 俺は急いで後ろを向いた。

 するとそこには


 「に…い……さん?」


 そこにいたのは俺の最愛の妹であり思い人の深雪だった。


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