1-5 ダンジョンには『詰み』要素がある
第五階層での狩りはここを稼ぎ場にするパーティが多いだけあって、ある程度体系化されている。
しかし『男神のダイス』が悪い出目を出すことはもちろんあって、第五階層における
「ゴーストハンドの群れだ!」
本当に滅多に出ないので『遭遇したら運が悪い』とされるこの魔物は、名前の通り『人の前腕』そのもののかたちをしている。
主に三十からの群れで活動しダンジョン五階層を漂っており、ある特性から遭遇することは滅多にないのだが、こうして出会ってしまうと非常にまずいことになる。
まず、物理攻撃が効かない。
そして浮いている。
さらに群れで活動している。
地形さえも無視し、壁も天井も透過する。
なのでゴーストハンドの群れはほとんどの時間を『壁や天井の中』で漂っている。
だから遭遇することが少なく、出会ってしまうと物理攻撃手段しか持たないパーティは『詰み』になる。
魔法は通じるのだが、人の前腕程度のサイズで宙を漂うようにゆらゆら浮いているゴーストハンドに魔法を当てるのは難しい。
また、一体二体を苦労して仕留めたところで、相手は数十の群れだ。
広範囲魔法で一気に殲滅してしまう手段もあるのだが、ゴーストハンドと遭遇するケースはだいたいが『気付いたら囲まれている』というもので、そういった殲滅手段では味方を巻き込みかねない。
そこで役立つのが武僧の持つ『祓い』のスキルである。
回復専門の僧侶などは持たないこのスキルは、ゴースト系特攻であり、なおかつゴースト以外は巻き込まない。
イヴは仲間たちがゴーストハンドを引きつけているうちに下腹部で気を練り、
「
朗々とした美しい声が響き渡ると、イヴから真っ白い光が広がっていく。
球状に広がる光に触れたゴーストハンドは空気に溶けるように消え去っていき、あっという間に一体残らず消え去った。
しかしパーティメンバーたちは気を緩めず気配を探り、ついに一体の気配も感じ取れない確信を得ると、安堵の息をつく。
「ふぅ……ヤバかったな。イヴがいてくれて助かったよ」
「
「いやでも本当に助かるよ。あいつら体を貫通して内臓責めて来るからさ。内蔵責めの快楽は対処が難しいんだ……そうやって苗床に連れ込まれたやつを何人も知ってる」
そう語るメンバーの顔は暗い。
この世界、女性がダンジョンで死ぬことはまずないが、それはそれとして、まったく安全かと言われると、そうでもないのだ。
特にゴーストハンドのような『特定のスキルを持った仲間がいないと詰み』というものも多い。
(……ダンジョン、ヤバいわね……)
そう、実はヤバい。ダンジョン。
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