実験成功



1948(昭和23)年 初夏


日領マーシャル諸島、ビキニ環礁周辺海域にて、島民らを退避させた上で、日本陸海軍共同でのとある新兵器の実験が行われていた。それはこれより3年前、米国が実験に成功したそれと同様の、原子力エネルギーを用いた爆弾であり、この度日本軍も開発、この実験でそれが成功か否かを見極めるわけである。その威力を確かめるため、海面には廃艦となった旧式軍艦や廃船を標的として並べ、その上空で爆弾を炸裂させる手筈である。



「安全装置解除しました」


「よし、投下10秒前・・・5秒前、4、3、2、1・・・投下、投下!退避する!」


観測用ラジオゾンデと共に投下されたその爆弾は計算通り目標マーカーへ向けて自由落下をはじめ、投下した爆撃機は爆発の影響から逃れるべく退避行動を始める。そして、これより数十秒後・・・・・・


「なんだこれは・・・」


太陽が落ちてきたのではと錯覚する程の、強烈なエネルギーが生み出すまばゆい閃光、そして廃艦とはいえ重厚な造りである戦艦を文字通り吹っ飛ばすほどの凄まじい衝撃波が襲ってくるのを、洋上観測班の巡洋艦高雄に乗り込むクルー、関係者達は感じていた。


「・・・とかく、実験は成功か」


高雄の甲板で衝撃波による波が艦体を打つ様や海面に打ち上げられた魚の死骸を見ながら、軍人達は単に新兵器の開発成功に喜ぶ中、この恐るべき爆弾の開発に携わった学者達はこの実験の成功に複雑な表情であった。



(この兵器は全人類にとって・・・もしこれが人間の上であったら・・・・・・)


未だこの恐るべき兵器が実戦で使われた事の無いこの世界。それは裏を返せば、いつそれを、どこがやるかは分からない状況の中、なんとか自国軍はその汚名を着ないようにしてくれよと思う博士達であった。






















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