理想への一歩



昭和23年 2月



朝鮮総督府が廃止、日の丸の旗は降ろされ、朝鮮半島はついに約38年ぶりに日本統治からの独立を成す。昭和17年以来現地独立運動家達と協議を重ね、朝鮮系の人々の意見も集めた結果、大韓帝国の復活という事でなく、その国家は新たに民主主義国家として、国号も単純に「韓国」となり、改めてスタートを切る事になった。これに伴い朝鮮軍も廃止となったものの、未だ隣国が内戦中という事もあって独立後暫くは安全保障上の懸念があり、条約により日本陸海軍の一部部隊はそのまま韓国内に残る事となった。民間の方では既に半島に定住している日本人やこれまで日本籍だった韓国人はそのまま、韓国籍を取るかは各々の自由で二重国籍も暫定的に認めるとし、交通標識や変わる地名なども漢字かなとハングル文字の両表記にして混乱を避けることとした。また、その国号に関しては独立運動家や民間の朝鮮半島出身者らの間でも最後まで様々な意見があったが、かつて関東大震災直後のデマの流布などもあって、軍人も民間人も数少なくない日本本土出身者が彼らを指して卑下するような意味合いを込めて「おい朝鮮」などと威圧したり暴力を振るったりする(そういう事は中華系や台湾系民族に対してもあったりしたが)という事を行っていた事例もあったりして、そんなイメージを払拭するために「韓国」となった経緯だ。この韓国独立や台湾返還と植民地主義の撤廃を自ら示してみせる日本の行動は国際世論に好意的に受け止められ、国際社会での日本の発言力は日に日に高まりつつあった。


「ともあれ、これで我が国の理想とする日韓中の団結による大アジア同盟構想に一歩近づきましたな」


「えぇ、来るべき時のために・・・・・・」



来るべき時・・・日本政府は今の束の間かもしれぬ平和な内に、ある事態を想定して密かに準備を行っていたのだ。果たして、そのしかるべき時とは対ソ冷戦が熱戦になった時か、このところ植民地問題で対立を深める英国相手か、はたまた・・・・・・






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