黄色い人達


1946年 初秋


いよいよ始まったインドネシアの独立闘争は、やはり英領マレーのオランダ側での参戦を招いたものの、緒戦で日本海軍の空母航空隊がキングジョージ5世、プリンス・オブ・ウェールズなど英東洋艦隊主力戦艦を撃破するなどの大戦果を収めたりもあって、戦況はインドネシア・日同盟軍優勢で推移しつつあった。なお、今般の同盟に関しては、その締結目的からか、日本側は公式に「インドネシア・日本同盟」と、必ずインドネシアという国名を先に表記する事としていた。そしてこの頃、彼らの祖国に伝わるある伝承がインドネシア軍将兵の間で話題になっていた。


「我らの王国は白い人々に支配される。彼らは離れたところから攻撃をする魔法の杖を持っている。白い人々からの支配が長く続くが、空から黄色い人がやってきて白い人々を追い払ってくれる。この黄色い人も我らの王国を支配するがトウモロコシの寿命と同じくらいの期間しか居ない」


その伝承は12世紀、東ジャワのジョヨボヨ王が書いた「パラタユダ」という民族の叙事詩にある一節。この中にある「白い人」がオランダの白人達、「黄色い人」は派兵されてきた黄色人種の日本人達の事では無いかと、インドネシア人達は考えたのである。そして、現実の黄色い人達は「我らの王国」を支配する気はないようだが、実際に日本軍は空挺作戦もやって空から降ってきたし、トウモロコシの寿命と同じ期間・・・おそらくそれまでに祖国解放が達せられるんだと、そしてそれを見届けた黄色い人達は彼らの国へ帰ってしまうのだと、インドネシア軍の兵士達は考えるわけである。













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