事件
北フランス、ノルマンディーへの上陸作戦で始まった英米日を中心とする連合軍の一大反撃作戦。少なくないと言うより、小国の軍隊なら壊滅とされるような犠牲を出しながらも連合軍は上陸に成功。その頃、東部戦線では各地でソ連赤軍の目に余る横暴(日米軍兵士にも少なからず犯罪行為はあったが、ソ連軍のそれは余りにも顕著だった)に彼らの支援に来たはずの日米軍は本国や各司令部の指示を待たず、現場の独断で作戦目的を変更。彼らは東中欧諸国の赤化阻止と称し、味方のはずのソ連赤軍へ銃を向けた。日米両国政府ともこの事態を聞き、即刻全軍に命令厳守を徹底するよう指示したものの・・・・・・
「これでは支那事変の二の舞ではないか!」
現在ポーランド領内にいる陸軍部隊が勝手にソ連軍に銃を向け、攻撃を中止せよ、事態を拡大するなとの命令にも一向に従う気配がないとの情報が齎され、珍しく激昂して陸軍長官を怒鳴りつける東條総理。
「し、しかし総理、彼らの気持ちも・・・現地民衆の支持もあるようですし・・・」
「確かにソ連軍の事は私も聞いておる、だが一丸となって東西からのドイツ打倒を目指すこの時にこのような事態はヒトラーを喜ばすだけだ!戦争は感情や精神論でするものではない!」
「申し訳ございません・・・・・・」
「現地にいる他の部隊に当該部隊の処分命令を出せ、即時だ」
「総理、それはさすがに・・・」
「命令だ。軍の総指揮権は私にある。情報では既に米ルーズベルト大統領も同じ命令を発しているとの事だ」
「・・・・・・分かりました」
その命令はすぐ様国防省から現地に届き、その為に日米双方の正規部隊が動き出す。彼らは心の奥底にある情を振り切って、暴走する味方に銃口を向ける。
「戦場で軍法会議をやる暇すらないとはいえ、やはり来るものがあるな」
「俺達は死刑執行人だ、そう思う事にしよう」
自分達の手で穴だらけだったり顔が分からなくなっていたりする悲惨な姿になった遺体に手を合わせ、彼らも本来の任務に戻る。こうして、東部戦線連合軍分裂事件と後に呼ばれるこの事件は収拾し、再び日米軍もソ連軍と協力しての東部からのドイツ侵攻を目指す。
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