最大の作戦開始
1943年 6月6日(現地時間)
後の世に語り継がれる今次大戦、否、記録に残っている限り、人類の戦争の歴史上における最大規模の作戦が始まった。英、米、日、加をはじめとする多国籍連合軍は各地で密かに演習を重ね、先だって北アフリカ戦線で行っていたトーチ作戦の教訓なども踏まえ計画を練り上げた上でこの日、遂に実行となったわけである。史実よりこの計画が早まった理由は日本が連合入りした事で東アジア太平洋戦線がこの世界では存在せずに戦力の集中がしやすく、北アフリカ戦線のトーチ作戦も早く済んだ事と、東部戦線の進みがこれまた史実より早く進み、英日を中心とした少なくない国が、この戦争が終わった後のソ連の増長を危惧しているという事情もあった。
「よう、ジャップ」
揚陸艇の中で、米陸軍のマイク一等兵が何気なく隣の日本陸軍松井一等兵に話しかける。流暢な日本語で話しかけられ、松井は驚いた。
「(なぜかこいつにはジャップと呼ばれても嫌な気はしないな)君の名前は?」
「マイケル・ドナルドソンだ、マイクって呼んでくれ」
「俺は松井康行。皆にはヤスって呼ばれてる、よろしくなマイク」
「ああ、ヤス。今から俺達は友達だ」
「なあマイク、マイクはなんでそんなに日本語が上手いんだ?」
「子供の頃ハワイにいた事があって、よく遊んでくれた日本人のお兄さんがいたんだ」
「そうか、その人といて自然に日本語を覚えたのか」
「ああ、とてもいい人でね、でも数年前に日本へ帰っていって、その後兵隊にとられてチャイナで亡くなったと聞かされた・・・・・・」
「・・・・・・ごめん、嫌な事聞いちゃったな」
「いいんだよ、今でも彼は俺のここにいてくれる気がするんだ」
そう言って、自分の胸を叩くマイク。と同時に揚陸艇が止まり、彼らは話を切り上げ、緊張の糸を張り詰めて、ビーチの敵陣地目掛けて歩を進める。味方の援護を受けての上陸敢行だったものの、敵の反撃も凄まじく、連合軍の兵士達も1人、また1人と砂浜に倒れていく。それでもまだ進むしかない。彼らに下されている命令は「進め」の一言なのだ。
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