生きてる証

 朝、いつものように目覚める。

 そして手を胸に当てる。

「今日もちゃんと動いてる…」

 微かながらも感じる心臓の鼓動。

 結衣は“生きてること”に安心感を感じた。


「結衣、起きた?」

 先に起きていた姉の沙羅が部屋に入ってくる。

「うん。今日もちゃんと目覚めれた」

「よかった」

「今日はどんな鼓動しているか確認して」

「わかった。ちょっと胸に耳当てるね」

 沙羅は結衣の胸に耳を当てる。

 微かに聞こえる不規則な心臓の音。

「…いつもより不規則だけど、ちゃんと鼓動しているよ」

 これが朝のルーティーン。


 結衣は生まれつき身体が弱くて入院を繰り返し、心臓も一般的な大きさより小さく1日のうちの半分以上は不整脈を起こし不整脈のない日は17年生きていて1度もない。

そんないつか止まってしまうかもしれない心臓の音を毎日レコーダーで録音している。

レコーダーに残るいくつもの生きている証。

録音しながら感じることはただ一つ。


今日も生きてる。




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姫乃川さんのSS集 姫乃川沙耶 @himesaya_38

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