第4話 星喰い

《マスター、先ほどまでメルクと情報交換していました。

 マスターの生命維持期間を延ばすために私でメルクをけん引して、

 ソルコアイト文明品を入手するのはいかかでしょうか? 》


「ルジュはメルクを牽引できるの?」


《問題ありません 》


「探す宛てはあるのかな?」


《メルクがこの恒星系内からソルコアイト文明反応をいくつか確認しています 》


「この星系内にあるんだね」


《はい、一番近い物から探索を始めます 》


ルジュを装着した状態で3時間程捜索していると


《マスター、漂流中のソルコアイト文明品を発見しました 》


僕にも浮かんでいる物が見えた


「あれって、ルジュと同じ?」


《はい、クリサリスですね。修復されますか? 》


「せっかくだから、修復しておこう」


《了解しました。メルク内に取り込んで修復を開始します 》


そして4時間後にも


「これも同じだね」


《はい、先にメルクが取り込んだ分は修復完了しています、

 これも修復を開始します》


次の反応を求めて移動すると、隕石が多数浮遊する場所に辿りついた


「やけに隕石の多い所だね」


《おそらくこの軌道にあった惑星の残骸だと思われます 》


「惑星の残骸?」


《2連惑星の衝突か飛来した隕石の衝突の可能性が高いですね 》


「そうなんだ」


≪ マスター、前方に漂流中のソルコアイト文明品を発見 ≫ 


「メルク、僕には島みたいな大きな岩の塊が見えるけど、

 もしかしてあの中に埋まっているの?」


≪ マスター、問題が発生。修復に使用するエネルギーが足りない。

 この恒星系の恒星使用許可を求める ≫


「メルク、ごめん。恒星なんて使用できるの?」


≪ ソルコアイト文明では使用されていた ≫


「そうなんだ、それなら許可するよ」


≪ 了解です、ルジュ私を恒星への突入コースに誘導を頼む。

  エネルギー充填に推定100時間 ≫


《了解、メルク。牽引状態のまま、これから恒星への突入コースに入ります。

 こちらは第2惑星付近で分離しますが大丈夫ですか? 》


≪ はい、それで大丈夫です ≫


僕達は恒星に向かって飛び続け20時間後には、

第2惑星の軌道付近まで恒星に接近した。


熱さを感じないけど、すごい温度なんだろうな。


《現在、表面温度は2000℃程ですね。

 それではメルク、ここで牽引を外します 》


≪ 了解、ランデブーポイントは予定通りになると思われる ≫


《了解しました、では100時間後 》


メルクは恒星に向けて落下していった。


《マスター、安全を考慮して恒星から距離を取りたいのですがよろしいですか? 》


「危険なの?」


《はい、恒星のプロミネンスが直撃した場合こちらもダメージが発生しますので。

 発生した場合は回避行動をとる必要があります 》


「安全距離まで離れてください」


《了解しました 》


「しかし、100時間か何をしていようか?」


《メルクから送られてきたソルコアイト文明の情報がありますが、

 ご覧になりますか? 》


「そうだね、せっかくだから見せてもらうよ」


 それからソルコアイト文明について、イメージとして送られてきた

 ガイダンスと共に見ていた僕は違和感を覚えた。


「なんだろう、どこかで見たか聞いた事がある気がする」


 ソルコアイト文明は僕たちの様なヒューマン型だけでなく色々な形態を持った

 知的生物の集合体が創り出した文明らしい。


 あの、赤い皮膚で頭部に角の様な感覚器官をもった生命体なんて、

 おとぎ話の【星喰い】にしか見えないな。


故郷のおとぎ話には、僕たちが住む大地を大きな口でかじって食べてしまう

【星喰い】の話があった。


僕はふと、目の前の光景に違和感を覚えた。


「ねえ、ルジュ」


《なんでしょうか? 》


「バカな事を聞くけど・・・・・目の前の恒星、すこし小さくなってない?」


《メルクが吸収していますので、小さくなってますね 》


「どのくらい小さくなるんだろう?」


《メルクとのランデブーポイントが恒星の中心核付近で指定されています。

 おそらく、あそこにはと思います 》


恐ろしい思い付きが脳裏をよぎった。


「ルジュ、【星喰い】って聞いた事あるかな? 」


《はい、ソルコアイト文明に対して。敵対していたゼブースト文明が付けた

 蔑称べっしょうですね。互いのことを【人喰い】【星喰い】と

 呼称していたようです 》


「【人喰い】?」


《はい、他の知的生命体を捕食して、遺伝情報を確保できるように

 調整された生命体群の文明でした 》


「ルジュ、恒星が無くなったこの星系はどうなるの?」


《星系としては数百年から数千年で崩壊すると予想されます 》


「居住惑星のある恒星系では、絶対やめようね」


《もちろんです。ソルコアイト文明での絶対禁止事項の1つです 》


なんだろう、星の終焉といえば超新星爆発やブラックホールに吞まれていく事を予想していたけど、こんなに静かに星が終焉を迎えて行く。


目の前の恒星がどんどん暗く、どんどん小さくなっていく。


そして、とうとう消えてしまった。


《マスター、メルクとのランデブーポイントに向かいます 》


「ああ、頼む」


恒星のあった所に向かうと、メルクがポツンとそこに浮いていた。


≪マスター、エネルギーの充填完了。


 ルジュ、ソルコアイト文明品の所へ輸送をお願い ≫


「わかった、ルジュ、牽引接続をお願いね」


《了解 》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る