第4話 国家安全保障局

「うん・・・」

悩んだ様子でうなずいた。


「この爆弾はバッテリーの電圧を上げるために、

コンデンサーが何個もつけられています。

現在のバッテリー性能ではこの

コンデンサーは必要ないと思います。

 つまり、この爆弾は10年くらい

前に設計されたのではないでしょうか」


亮はそう言ってクリスの顔を見た。

「團さん、あなたはいったい何者なんだ」

トニーが呆れた顔で亮の顔を見つめて、

亮の対処にほどほど困っていた。


「少佐、いいですか?」

クリスがトニーの了解を得ると

「團さんの言っている事は本当です。

この爆弾は8年前に描かれた

設計図にそっくりです」


「ええ、どうりで形が古いと思っていました」

亮はそう言って、爆弾は核爆弾が

爆発した時の電磁障害を参考に作られた

初期型EMP爆弾と確信した。

七人は亮の顔を見つめたトニーが亮に質問した。


「團さん、もしこの爆弾を作れと

言われたら作れますか?」

トニーが言うと亮は悔しそうな顔をして答えた。

「いいえ、私は専門が薬学なので

作るのは到底無理です」

亮は作るのに核物質が必要であると

言えなかった。


「そうですね。もしすべてを知ったら

本当にここを出られないところか

 機密保持の為に命を失うかもしれませんよ」

トニーは亮を脅かすように言った。

「それは機密保持の書類にはいつでもサインします」

亮が素直に言うとトニーは部下に

機密保持書類を持ってくるように命令した。


「團さん、隣の部屋でコーヒーでも

飲んで待っていてください」


~~~~~

亮が出て行った会議室ではトニーが頭を抱えた。

「あの男をどうすれば良いんだ?」

「テロリストに設計図を売る様子も

自分で入手困難な核物質を使って

爆弾を作ることも無いと思います」

クリスが言うとトニーがうなずいた。


「では、解放後にNSA(国家安全保障局)に

監視させましょう。

 行動に問題があった場合、彼を処理すると言う事で」

トニーの隣にいたフリップ中尉が重い口を開いた。


※ 国家安全保障局はアメリカ国家の安全を

護るためアメリカ軍の中将がトップなる、

世界のありとあらゆる通信を傍受・盗聴する組織である。


「うん、そうしよう」

トニーがそれに同意した。

それを聞いていたクリスは何としても

亮に対する盗聴を避けたかった。

「ちょっとトイレに」

クリスはそう言って亮がいる部屋に入った。


「亮!」

「ああ、クリス久しぶりです」

二人はがっちりと手を握り合った。

「亮、やばいぞ。NSAがお前に付くかもしれない」

「えっ、監視と盗聴ですか?」


「ああ、スマフォ、有線電話、ひょっとしたら

自宅にも盗聴器を付けられる可能性がある

 そしたらのんびりとエッチもできないぞ」

「あはは」

亮は毎日相手の女性を変えたら盗聴している人間が

どう思うか想像すると可笑しくてしょうがなかった。


「笑い事じゃないぞ、亮。プライバシーが

無くなってしまうぞ」

「はい、そうですね。それよりクリス、

EMP爆弾の改良点をメモしていました、

参考にしてください」


「ん?これは・・・」

クリスは亮がEMP爆弾対して

新しい理論を考えていたので

驚いていた。


「なんでこんな事を考えているんだ?亮」

「どうせ爆弾を作るなら核爆弾より

人を殺さなくていいじゃないですか」

亮がクリスに向かってほほ笑んだ。


「まあ、そりゃそうだが。爆弾が爆発したが

場所のすべての金属が1ヶ月間磁気を帯びて

 通信が不可能になるなって誰も思いつかないぞ」


「目の前で爆弾が爆発しなきゃ思い付きませんよ。

これをテロリストのアジトの頭の上で

爆発させれば、人は死なずに通信機器だけではなく

すべての武器も使用不可能になって

みんなアジトから出て行く」


「あはは、それはおもしろい」

「それで取引だ、クリス」

亮は真剣な顔をして言った。


~~~~~

取調室で樫村に取り調べを受けている清水大作は

アフガニスタンから麻薬をアメリカらMDMAを

密輸して投資家と夜な夜な乱○パーティ接待に使ったこと

そのために、与謝野と接触した事を自供した。

「与謝野というんだな」

「はい」

清水大作はオドオドと返事をした。


「それで他の連中の素性は?」

「わかりません、接触したのは

あの男だけでしたから」

「それでボートを貸したんだな」


「はい、1週間前から使いたい

といわれていました」

清水は樫村の質問に答えた。


~~~~~

美咲の指示を受けた捜査員は新橋、

浜松町、芝公園、白金、白金台そして

代々木上原へ向かって捜査を始めていた。

「大野さん、これだけアパートマンションが

ある中どうやって探すんですか?」


「まあ、アジトにするには家賃がそれほど

高くないところだな。

それに仲間の出入りが多いので

 オートロックではなく、2DK以上、

万が一の逃走を考えて2階以下のフロアーが普通だ」


「なるほど」

桜田は先輩の大野の的確な話に感激をしていた。

「それに今回は時間がないので、片っ端から

とはいかんだろう、絞り込んでいくぞ」

「はい」

大野と桜田は白金台エリアのマンションの

1階と2階を観て回った。


~~~~~~

「取引ってなんだ?」

クリスは亮の意味ありげな言葉に尋ねた。

「この設計図をアメリカ軍に差し上げます。

 あとはクリスが僕の理論を検証して

実際にこの爆弾の開発をしてください」


「つまり、国の功労者に盗聴なんて

できないという訳か・・・なるほど

 さすがだな」

クリスは亮と拳をぶつけ合った。


「クリス、人を殺すより人を救う事の難しさ。

人を救う爆弾を作ってください、

 あなたならできるはずです」

「ああ、その通りだ。

僕は君に会えた事を誇りに思う」

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